お別れパーティー



 日本では春が別れの季節であるが、ここでは夏が別れの季節である。教会の聖書講座で一緒だったヨスタとマギーたちもミクロネシアに帰ることになった。実際に彼らがここを発つのはまだ半月程後なのだが、私達の一時帰国もあって、昨夕お別れ会を開いた。

 このところコロンビア周辺は40度の猛暑が続いており、狭い我が家へ元気なガキンチョがうようよ集まるのは、正直言って恐怖であった。何しろ、彼らは7人の子供がいるのだ。しかも、聖書講座の先生をしてくれているデイビッドが3人の子供を連れて合流することもあって、おとうはお昼前からクーラーをガンガンかけて家の中を冷やしていた。

 マギーはスシが好きで、以前請われて巻き寿司のレシピを渡したことがある。巻きすを広げて云々という説明を英文だけでするのは、本当に苦労した。で、下手な絵も添えたのだけれど、彼女には良い思い出のレシピになったそうで、苦労も報われるというものである。で、今回はちらし寿司を作ることにした。その他、野菜料理を少しすればいいかなあと思っていると、おとうが「から揚げがなくちゃあ、パーティーっていう気分が出ねえよなあ」とのたまう。私一人が忙しい思いをして、おとうがゴロゴロくつろぐといういつものパーティー前のパターンをやめるのを条件に、から揚げを献立に追加した。

 日曜日、教会から帰って、私は早速料理に取り掛かる。ご飯は2回に分けて炊かないと足らないに違いない。具は昨日のうちに煮ておいた。鶏肉もショウガと醤油につけてある。短粒種の米が口に合わないと困るので、サンドイッチも作ることにした。もっともこれは子供に任せておけばいい。ニンジンのグラッセとサラダと…。料理をはじめると、すぐに室温が上がり始めた。ちょくちょく室温のチェックをしていたおとうが「大変だ、クーラーが壊れたのかもしれない。」と騒ぎ始める。40度もある日にから揚げを家で作るというのがどういうことなのか、何にも解っちゃいないのよ。料理はなるべく早く終えるようにという身勝手なお達しを鼻先で笑って、私は料理を続ける。約束通り働くべく、おとうは掃除機をチーに持ってこさせ(この場になってもなるべく人にさせようとする根性がきにいらないのよ、私は。)掃除を始めた。見慣れない光景にミーが度肝を抜かれ「おとうさんが!」と絶句する。

 おとうは前の日、中華食料品店に行ってジャパニーズスタイルといううたい文句の冷凍餃子をしこたま買い込んできた。一度に大量の餃子を焼くにはホットプレートが手っ取り早いのだが、室温をこれ以上上げたくないおとうは「外で焼こう」という。結局、40度の暑さの中、おとうはホットプレートをフロントポーチへ持ち出して餃子を焼き始めたのだった。待ってましたとばかりにそこへゲストがやってくる。こーゆーのをスタンドプレーっていうんじゃないの?