ラッパ犬



 ポポコのしっぽは手術から2週間後に抜糸をする予定だった。出血するかもしれないと聞いていたので、手術から1週間目の金曜日の朝、端にちょっと血がついているのを見つけた時もこんな大事になるとは予想していなかった。

 金曜日の夕食後、おとうがポポコのしっぽがぱっくりと口を開けていることに気がついた。あいにく動物病院の“営業”時間は過ぎている。で、動物病院の留守番電話で案内のあった救急病院に行くことにした。動物の救急病院というのがあることにも驚いたが、そこの豪華なことにもびっくり。人間並みというか、それ以上というか…。おとうが言う。「こんな所にわざわざ雑種の捨て犬を連れて来るようなヤツはいないだろうなあ」どうでもいいけど、ポポコは今はもう捨て犬じゃないのよ!純血種も雑種も命の尊さに違いはないの!

 看護婦が聞いた。「どうしてしっぽを切ったの?」チーが「しっぽを動かせなかったの。」私が「捨て犬だったので、交通事故にあったか何かしたんだと思います」と付け加えた。「捨て犬」と看護婦さんはつぶやいて納得した。ドクターは「外傷を受けたことがありますね。だから、傷口がつきにくいのです。どんな外傷だったのですか?」今度チーは捨て犬だったことを最初に言った。ドクターはそりゃ当然とでも言いたげにうなずいて納得してしまった。ドクターは傷口をなめるのがよくないと、首に漏斗のようなカバーをつけるように言った。傷口の消毒やら、まして縫合などはなかった。診察料49ドル。首カバー20ドル、しめて69ドル。

 月曜の朝1番にいつもの獣医さんに電話をする。すぐ連れていった。「毎朝夕、お尻を洗ってスプレーの消毒液できれいにしなければいけない。傷口は縫いあわせることはできないので、治るのに6週間くらいかかるかもしれない。1日のうち90%はカバーをつけておいてください。え?バケーション?その間、預かってあげましょう。1泊8ドル××セント。後2週間は抗生物質を飲ませてくださいね。一度消毒をしますから、それが済んだら電話します。お宅でお待ち下さい。」で、電話をもらってかけつけると、「医療用のホチキスで止められましたよ!止めたところには触らないでください。」しめて82ドル。カバーをつけたポポコは漏斗というよりもラッパをかぶったように見える。だから「ラッパ犬」というのがふさわしい。

 それにしてもこのラッパ犬、おとうに「金食い犬」と言われるのも仕方がないような気がする。医療費だけで、もう、1000ドル以上費やしているのだ。「まったく金のかかるヤツだ」おとうでなくとも、そう愚痴りたくなるけれど、ポポコに罪はないのよ。カバーなんて、この暑さの中、これ以上うっとうしい物はないっていうものなのに、おとなしくしてる健気なポポコ。早く良くなって欲しいものである。