怒鳴るな!オヤジ
しっぽを切り取ったポポコは縫った糸を自分で取ってしまい、傷口がぽっかり開くという最悪の事態になった。そのことはまた日を改めて書くことにするが、リーシュを短くして繋ぎっぱなしなので、夕方の散歩がポポコにとって唯一のトイレットタイムになる。
近所を15ー20分くらいかけて歩くのだが、その行程の半ばでいつもう××をするのである。ある日、ポポコの散歩にカオ、ノン、ミーを連れて出かけた。いつものようにスーパーの袋をポケットに入れて。で、しばらくしてポポコはある家のフロントヤードの芝の上にう××をした。私がポケットに手を伸ばすより早く、その家の主らしき男の人が玄関から出てきて怒鳴り始めた。「どうしてここをトイレに使うんだ」というようなことを言っている。とにかく、すごい剣幕だ。いきなりそーゆー言い方をされるのはとても不愉快である。そりゃ、人様の庭にう××をさせるのは誉められたこっちゃあない。でも、芝が目前にあるというのに、舗装したところで犬にう××をしろというのも難しいことなのだ。人にあんなふうに怒鳴られたことのないガキンチョは凍り付いている。私はポケットから袋を取り出して「拾うところよ!」と言い返した。遠かったので、その男性ががどんな表情をしているのかは分からなかった。
後でおとうに言ったら「どうしてI'm sorryと言わなかったんだ?」と聞かれた。確かにおとうだったらごめんなさいとヘラヘラ笑っていることだろう。しかし、いきなりあの怒鳴り方は理不尽である。いつも必ずう××を家に持って帰っている私には納得できない。我が家のフロントヤードにも時折、うれしくない置き土産があって、嫌な思いををしている。私は被害者であっても、決して加害者であったことはないのだ。文句を言われるのは仕方がないとしても、いきなりあの怒鳴り方はないじゃないの!そう思わずにいられなかったから、私はごめんなさいなんて言わなかったのよ。
翌日カオは「この近所の人はみんなフレンドリーなのに、あのオジサンはいつもああなのかなあ?」と言った。「テイラーのお母さんや、ベッキーのお母さんにでも、やっぱりああに怒鳴ったのかなあ?」どこにだって、偏屈なオヤジはいるだろうけれど、アジア人を汚い物のように思っての発言だとしたら…。なんて考えたら、なんだか悲しくなってしまった。去年の秋、カオの友達でインド人のモニカが言っていたのを思い出した。「カオルと同じクラスでうれしい。一番の仲良しのハンナとはクラスが違うし、私にはあんまりお友達がいないの。肌の色が違うからね。」この近所(デベロップメント)にはモニカの家族と私達、そしてもう一軒中国人の家族がいるだけで、他は白人で占められているのだ。「銃で撃たれたりしないだろうなあ」おとうが不安そうにつぶやく。「怒鳴られてるのにへらへら笑ったら、余計不気味に思われるでしょ?不愉快な時は不愉快だっていう顔をした方がいいのよ。」そう答えはしたけれど、ちょっぴり不安になってしまった。