しっぽ切り
捨て犬だったポポコは、しっぽを動かせない。ドクターが回復の可能性がないと言った時から、いずれ切らなければいけないだろうと覚悟はしていた。う××をするたびに、動かせないしっぽで自分のう××を撫でていくわけで、汚く臭いことこの上ない。この時期は、ハエが寄ってくるし、ハエを嫌ってポポコは気が休まらないし、見ている私達も不快なのだ。しっぽは感覚もなくなっていて、自分の後足で踏んだまま座っていたのに気づかず、立ち上がろうとしてしりもちをつくという、犬にとっては実に不本意な失態を見たとき、切ってやるのがポポコのためだと覚悟を決めたのだ。
金曜日に予約を取った。不妊手術と同様に朝連れていって、夕方連れ帰ることになる。全身麻酔をするため、前日の夕方6時以降は食べ物も水も厳禁で、この暑さのなか、ポポコにはつらいことである。犬の種類によっては、小犬の時にしっぽを短く切ってしまうことがあるそうだ。小さい時は簡単な手術だけれど、ポポコのように成犬になってからのしっぽ切りは大掛かりになる。ポポコは動物病院の受付にいるお兄さんが大好きで、これから何をされるかもわからないままご機嫌で奥に消えた。夕方、帰ってきたポポコはしっぽの付け根からまだ血が出ていた。包帯を巻いたのだが、取れてしまうのだそうな。今日は餌をやってはいけない。水は少し飲ませても宜しい。これから5日間朝と夕方、薬を飲ませなければいけない。しばらくはポポコと遊んではいけない。お尻を触ってはいけない。2週間後に診察を受けるように。予約の時間は後で電話をしてくれ。などなど。注意がいっぱい。
ポポコがウチへ来てから、フィラリア、不妊手術、しっぽ切りとポポコにはつらい思いばかりをさせているような気がする。でも、チーは「いい加減な人のところに行ってたら、病気の治療もしてもらえないで、今ごろ死んじゃってたかもしれないよ。しっぽだって、自分で噛んで腐っちゃってもほっとかれたかもしれないよ。ウチの子になってよかったんだよ」と言った。そうだといいのだけれど。
ポポコの薬は瓶の蓋を開けただけで、オエーっとなるほどひどい匂いである。嗅覚の鋭い犬の薬がこれでは本当に困ってしまう。おやつに混ぜようが何をしようがポポコは口をぎゅっと結んでそっぽを向いてしまう。仕方なく口の横からグググッと薬を突っ込み、口を押さえ、薬が溶けるまでそのままでいなければいけない。途中で吐き出されると何回も突っ込んだり、溶けかかったのを口の中に擦り付けてやらなければいけない。しかし、犬ってすごいものである。これだけ嫌な事をされているのに、決してうなったり、まして噛んだりしないのだ。で、薬を飲み終えた後は、健気なポポコを精いっぱい誉めてやることにしている。
ちなみに料金は142ドルであった。