動物園の特別公開



 私達は動物園の家族会員になっている。6人分の入場料を払うより、年会費を払って家族会員になる方が安い。レジャー施設の少ないこの辺りでは動物園は貴重な場所で、1年間フリーパスの家族会員カードは必需品でもあるのだ。散歩代わりにちょこっと寄ることも多い。「今日はペンギンを見よう」などと的を絞って見に行くのもいい。日曜日の朝、教会をサボっていくと、猿たちが大きな声を張り上げていたりして、いつもとは違った光景が見られたりする。完全な車社会の中で、楽しく歩き回れるのもうれしい。

 先日、家族会員だけに閉園時間後、いつもは見られないところを見せてくれるという案内が届いた。トラの展示場、キリンの寝るところ、動物病院の中…。と聞いては動物好きのカオはもちろん、私も行ってみたいのよ。で、ミス・ケイのレッスンの後、おにぎりを食べてからでかけた。実は、動物園の中に、ホットドッグやピザを食べるところがあるし、バーガーキングの店まであって、普段は飲み物やお弁当は持ちこんではいけないことになっている。が、この日は、動物園の中でピクニックをしていいのだという。弁当を作るのは構わないが、蟻や蚊が心配だし、平日の夜ともなれば翌日のことが気がかりなのだ。さっさと見るところだけ見て引き上げたい。それで、家でおにぎりを食べてから行くことにした次第。

 ミーはトラの展示場に入ると知って体を硬直させた。何度も「トラは他の部屋に行ってるのよ」と説明しても、ミーの顔はひきつったまま。いつもトラがうろついているところを人間がゾロゾロ歩いているのは、実に変な感じだ。動物病院では、ベッドの上にゴリラの縫いぐるみが酸素マスクをつけて寝かされたり、足の骨を折ったという想定でフラミンゴの縫いぐるみが包帯を巻かれていたりと、サービスは満点。超音波やレントゲンなどの設備は人間の病院と変わらない豪華さだ。レントゲン写真が何枚か貼ってある。「妊娠中のヤギ。胎児は何匹でしょう?」答えはどこにもなかったが、私は3匹とみた。キリンの部屋には、高いところにかごがあり、草がたくさん入っていた。「キリンって本当に背が高いんだねえ!」チーが感心したように言う。飼育員がキリンに草をやっている。間近で見るキリンは首も長いが舌も長く、優しい目をしていた。

 「ソフトドリンク・フリーって案内の葉書にあったよ。咽が渇いたから、ドリンクをもらおうよ」しっかりもののチーが言う。マウンテンデューを2本貰って帰ろうとすると「ピザが食べたい!」とぐずるヤツがいる。有無を言わせず黙らせて家に帰るとおとうが言った。「面白くも何ともねえ!」え?面白くなかったの?私、結構楽しかったんだけどなあ。