遠足はレストラン



 チーは遠足でメキシカン・レストランに行った。私がよく行くWal-Martのモールにあるんだそうだ。遠足と言っても気楽にしてはいられない。この遠足はスペイン語の授業の一環として行われるため、レストランではスペイン語を使わなくてはいけないのだから。メニューは3種類。そのなかからひとつを選ぶ。飲み物とデザート付き。5ドルとチップを前もって払い込んだ。先生は通常の豊富なメニューから選べるとかで「ずるい!」とチーは言っていた。ソフトドリンクはお代わり自由だが、それも注文はスペイン語でなければならない。真偽のほどはわからないが、先生によるとウェートレスさんたちは英語が出来ないんだという。5年生たちは必死でオーダーの練習をしたんだそうな。

 遠足から帰るとチーは「今日はおなかいっぱい!おやつはいらない」と言った。「結構旨かった。残さず食べた。辛い物に目がない担任のミセス・ライアソンはみんなのテーブルをまわってはつまみ食いをして、お行儀が悪かった」そうな。「今度は家族で行こう!」というチーに、チーズの苦手な私は「英語のわからないウェートレスさんにチーズ抜きの料理をチーが注文してくれるんだったら、行ってもいい」と答えておいた。

 チーはメンバーではないけれど、5年生のイーグル・プロジェクトではCalifornia Dreamingというレストランに遠足で行くことになっている。そのため、イーグル・プロジェクトはいつも理科の実験をしたり、コンピューターの勉強をしたり、難しいことばかりをしているのだけれど、最近はもっぱら「テーブル・マナー」の勉強に明け暮れているのだ。 「ナイフやフォークがどっさり並んでいてね、どの料理の時はどれって決まってるんだって。ガチャガチャさせたらいけないんだって。」食い気に目覚めたチーはうらやましそうに言う。家族で行ってみるのも悪くない。私だって、たまにはファーストフード以外の外食をしてみたいもの。おとうは、会社の人と何度か行ったことがあるそうな。で、ガキンチョが補習校に行っている間、ちょっと外観だけでも見ておくことにした。

 サウスカロライナはご存知のように南部に位置しており、「洗練された都会」のイメージとは遠い土地柄である。「フライドチキンは手掴みで食べるものさ。それをナイフとフォークで食べようとするのはYankeeだよ」と言い切ってしまう。だから、高級な、服装やマナーにうるさいレストランはあまり多くないのだと思う。California Dreamingはこんなサウスカロライナでは気取った部類のレストランなのだ。かつて駅だった建物をレストランとして改装したもので、入っていく客を見ると、確かにひざの擦り切れたジーンズを履いているようなのはいなかった。教会へいくような服装が多い。テーブルには真っ白な布のナプキン。落ち着いた雰囲気。ふっと我が家の食事風景が浮かんだ。ナイフは使えない、箸は落とす、挙げ句の果てに手掴み。ガチャガチャ、ズルズル、話題も下品で情けない。我が家では、「まずはしっかり食べるということが大事」と躾をおざなりにしてきた結果である。

 近いうちにメキシカン・レストランの方に行こうと思っている。California Dreaming は遠い遠い夢なのよ。