発散しなくちゃ!



 いつもは姉たちが学校へ出かけてから起きるミーが、最近早起きである。で、ある日、久しぶりに姉たちを送って学校の中まで行くことにした。

 まず、カオのクラスの前で廊下に貼り出されている絵を眺める。次に隣りのミセス・クインのところでどっぷりおしゃべり。いつのころからかミーはミセス・クインをグランマ・クインと呼ぶようになっている。それからようやくノンのクラス。ミセス・デイとちょっとおしゃべりをして、オフィスの方に戻った。すると、車で先についたはずのアレックスが廊下の写真を眺めている。15分くらいウロウロしているのかもしれない。「彼は学校が嫌いなのよ」というアレックスのお母さんの言葉を思い出した。アレックスにHave a good day!と声をかける。アレックスはにっこり笑うと自分の人差し指を唇にあて、それからその指をミーの唇にあてて教室へ向かった。

 それから何日かして、ミーを幼稚園に連れて行く時、アレックスが廊下でポツンと算数のプリントをしているのを見た。ミーが幼稚園に行く11時30分は1年生が休み時間を終える時間でもある。だから、運がいいと校庭で遊ぶノンたちに会えることもある。この日も教室はまだざわついていて、戻ってきたばかりだということが想像できた。ということはアレックスは休み時間もこうやって廊下で算数をしていたのだろうか?ミーを教室に送って戻るとアレックスはあちこちに気を散らせながら、指を折って算数をしている。あの様子では、時間ばかり食って効率が悪いのは明らかだ。アレックスはお母さんに「学校ではプリントをひとつ仕上げても、すぐ次のプリントが出てくる。次から次に出てきて、終わらないんだ。」と言ったそうである。で、やる気をなくしてしまったらしい。

 先週は学校中がテストをしていた。チーのクラスでは、テストが終わった瞬間、みんな大声を上げたそうである。見兼ねた先生が特別に休み時間をくれたので、みんな外へいって発散したそうな。テストの日ばかりではない。我がガキンチョたちは揃って学校ではおとなしくて良い子にしているものだから、学校から帰って小一時間は騒いだり跳びまわったり、甘えたり、ものすごい。下品な言葉も飛び交って、たまりかねた母はついに宣言したのよ。「今度下品な言葉を言ったら一回に付き10セント罰金をとるからね!」こうして、少しは下品な言葉が減ってはきたけれど、どの子も多かれ少なかれ、発散しなければいられないほどストレスを学校でためてくるということなのである。本当はもう少し学校の中で息をつける瞬間か持てるといいのだけれど…。でも、いつかアレックスにウチのガキンチョもつらいのだ、と教えてやることにしよう。


 PS;罰金の10セントは2ー3日は順調にたまったものの、それ以降は皆、下品なことを「バツバツ」というような伏せ字で言うようになって、たまらなくなってしまった。ただひとりおとうだけは相変わらず言っているので、今度はおとうに何かペナルティーを考えなければいけないと思う。押さえつけてくすぐるのが一番だとガキンチョと意見が一致した。おとうもつらいのだろうけれど。