買い物の光景
小雨の中、Xストアに買い出しに出かけた。ミーの幼稚園の関係で、11時には軽い食事を食べさせなければいけないし、おとうが12時から1時まで昼ご飯に帰ってくる。その後は、ミーのお迎えが2時で、買い物に行く暇はない。必然的に、買い物は9時半頃家を出て11時には戻るというパターンになるのだ。
こういう時間帯での買い物は、特に生鮮食料品を買う場合に困ってしまう。早すぎて、商品が出ていなかったり、あっても売れ残ったものだったりするのだ。Xストアは魚がなかなかなのと野菜がまあまあなので時折利用するのだが、前回行った時は魚コーナーが空っぽで、オジサンがのんきに鼻歌を歌いながら掃除しているところだった。そして、この日も魚屋さんは空っぽで、私はしょうがなく野菜売り場へ行ったのよ。日本ではプラスティックトレーがいまだに幅を利かせているのだろうか?ここいらでは、プラスティックトレーは肉と一部の野菜に使われるだけで、そのほかは自分で好きなだけビニール袋に詰め込むのである。ショウガもモヤシもピーマンもキューリもドサッと山積みになっている。
私が白菜を取ってカートに入れると2mほど離れたところに男の子を乗せたカートがあるのが見えた。その子はビニールをすっぽりかぶっていた。私が息を呑んだ瞬間、その子のお母さんは静かにビニール袋を取った。私だったら声を荒げていたことだろう。日本の知人の中には、とてつもなく豪快に叱り飛ばす人もいた。彼女らだったら、手が飛んでいたに違いない。しかしそのお母さんは穏やかに言った。「真面目な話だからきちんと聞いてね。これはとても危険なことなのよ。2度としてはいけません。ビニール袋はあなたを窒息させるのよ。息をすることがどんなに大切かわかるでしょ?息が出来ないとどんなに危険かわかるでしょ?だから、2度とやってはいけません。」
英語が苦手な私にもそのお母さんの言ったことは完璧に聞き取れた。それだけ、静かだけれどしっかり言い聞かせていたのよ。私が大事にいたらなかったことと男の子がこっぴどく叱られなかったことに安堵していると、お母さんはこっちを見てにっこり笑った。4歳くらいのその男の子は手に持ったビニール袋をじーっと見つめていた。きっと、その子の家ではお母さんが頭ごなしに怒鳴ることはないのだろう。
「危険なことはチョットは痛い思いをさせてでもわからせなきゃだめだ」よく聞く言葉である。でも、もしかすると子供は痛い思いなんかしなくとも話を理解する能力を持っているのかもしれない。そして、しっかり話を聞かせる習慣がなければ、そういう能力は伸びないに違いない。私はしょっちゅう怒鳴っている。言い聞かせて、言い聞かせて、それでも駄目でつい怒鳴ってしまうのだ。私の人間が出来てないからか、ガキンチョのたちが悪いのか知らないけれど…。でも、「ひっぱたいてわからせる」っていうのは私には実践できなかったのよ。おとうはそういった私の子育てを時折「生ぬるい」と評する。でも、今日は魚は買えなかったけれど、なんだか同士に励まされたような気がしてうれしかった。