ホームスクール その2



 「ホームスクールにすると言ったら、ベッキーは最初友達とあえなくなるから嫌だって言ったわ。でも、学校は友達と遊ぶ所じゃないし、社会性を学ぶところでもない。勉強をする所なのよ。それがベッキーとアレックスには出来ていないのだから、学校に行く意味はないわけ。友達は家のまわりにいるし、教会で話をすることも出来る。ミセス・デイは素晴らしい先生だと思うわ。でも、今の学校のシステムの中ではアレックスは勉強できないの。まだ6歳だっていうのにすっかり学校嫌いになってしまったのよ。」ベッキーのお母さんは早口でまくしたてた。確かに学校で遊ぶ時間はない。友達と自由に話をする時間もないけれど、学校が社会性を学ぶところではないというのは、正直言って驚いた。でも、そう言われると、言うことを聞かない生徒は担任からすぐに副校長や校長の所に送られ、最悪の場合、家にかえされるという方針に納得がいくというものである。

日本の場合、勉強についていけない子供のほとんどは授業が分からないまま、学校にいなければいけない。勉強の遅れは、たとえば塾や家庭教師で補うことになる。すると、子供の拘束時間はどんどん増えてしまうのだ。学校を辞めてホームスクールにするという考え方は、その点、子供の負担を軽くしてくれるだろう。もっともホームスクールの場合は、良い先生を見つけることが不可欠で、経済的な負担を覚悟しなければいけない。

今週はMAT7と呼ばれるテストがある。学年によってはBSAPというのもあって、先生たちは少しでも良い点を取って欲しいと願っている。そのために、ノンのクラスではせっかくの春休みにまで算数のプリントがごっそりあった。宿題という表現は使われていなかったし、実際仕上げて提出したのは数名の女の子だけだったという。(その女の子達はイースターエッグのお菓子を貰って大喜び。)普通、週末には宿題は出ないのだけれど、テスト前には算数(1年生は算数だけなのよ)のプリントがあって、ベッドに入ってから宿題があるのを思い出したノンは、姉たちに懐中電灯で照らしてもらって宿題をしたそうな。親に見付かったら、しかられるもんね。カオの先生からはよい成績をとるために、1)前夜は早めに寝かせる。2)朝食をちゃんととる。3)出掛けに子供を落ち込ませる様なことをしない。という進言があった。チーの先生たちも、テストでの注意点をだいぶ前から言っている。チーの場合は、このテストの結果で、次の年のクラスとミドルスクールへ進学してからのクラスが決められるので、とても重要だという先生の言い分は分かる。数年前まではアメリカ全土の統一試験SAT(大学に入る時に使われる)の平均点が最下位近くをウロウロしていたということで、今、州をあげて教育に力を入れているのである。それにしても、お尻を叩かれるのはもうたくさんだと、ベッキーのお母さんじゃなくとも思いたくなってしまう。

勉強なんて、本当に面白いと思ってやらなけりゃ、身にはつかないものである。それは私、身をもって分かっているのよ。だから、ベッキーとアレックスがホームスクールで楽しく勉強できるようになるといいなあと思っている。