イースター・パーティー その2



私は肉に粉をまぶすのをさせてもらった。隣りでシャーレーンがレタスをちぎっている。彼女には18歳の男の子を頭に5人子供がいる。一番下の子は養女である。男の子は一人だけで、ダンナは次に養子をもらうなら必ず男の子にしてくれと言っているそうな。キャッシーはポテトグラタンを作っている。箱に書いてある料理の作り方を見る時は眼鏡をかける。鍋を見る時はそれを外して首からぶら下げておく。眼鏡の紐がいっぱい売られているのはそのためか?ちなみにこちらでは「老眼鏡」という言い方はしない。reading glassesというのよ。いいでしょ、この表現。

チキンをトレイに無理矢理ならべると、キャッシーはオーブンを開けた。オーブンの中は既に3種類ほどの料理がぶっ込まれている。その下のラックに手羽先を入れる。匂いが移るんじゃないかとか、焼く温度が違うんじゃないかとか、そーゆーことは一切おかまいなしの雰囲気。野菜はレタスとラディッシュ以外すべて冷凍。チンしておしまい。そうこうするうちにマギーがローストターキーを持ってきたり、ドドドッとばかりに人と料理が乱入する。教会関係の集まりだけにお祈りが入ったりして、実際に料理にありつけたのは3時近かった。ガキンチョはガキンチョだけで固まって食べている。ミーもいっちょまえに親から離れていられるようになった。3年の年月の重さを実感するひとときである。

パーティーに使われたのは紙皿と紙コップである。たまに本物の皿やコップが使われることがあるが、食器洗い機があるので、日本で考えるよりは楽かもしれない。今回のような集まりの時はたいていみんなでよってたかって片づけてしまう。私は手を出すのが苦手である。英語が嫌いなのが一因である。頑張って片づけを手伝っていると、案の定シャーレーンのダンナがやってきた。ウチが持ってきた日本のお菓子の箱を持っている。「これは何と書いてあるんだ?」おっとっとの箱である。商品名を教えるとどーゆー意味かと畳み掛けてくる。横の小さな字を指して「これはどーゆーことが書いてある?」さらに「息子の高校の友達に日本人がいてね、日本語には3種類の文字があるって聞いたんだけど…」という。仕方なしに流しから離れ、説明することにした。もどかしい。情けない。自分の英語が、実に恨めしい。それでも何とか説明が終わった。彼は父親の仕事で子供の頃フランスに住んだことがあるそうな。フランス語が下手で、買い物をするにも苦労したんだそうだ。「我慢できない人が多いんだよね。話すのが苦手というのは分かるが、聞く方に我慢がないのもいけないんだ」てえことは、我慢してくれてたってえことなのか?まあいい。「今まで、中国語と日本語の区別がつかなかったけれど、これで見ただけで区別できる!」と喜んでくれたから。

最後は讃美歌を歌ってお祈り。みんな家族の健康やら仕事のことなど、気にかかっていることを長々と祈った。ショーン家の主、カルが祈ってThank youとしめようとすると、90歳ほどと思しきミスター・スチールが祈り出した。「一番大事なのは、主がここにいるということです。何世紀も過ぎて、今、目で見ることはできないが、イエスキリストがここに存在するということです。イエスの存在を信じることこそが大切なのです。」私はこの日がイースターだったことを思い出した。