イースター・パーティー その1
アメリカではすっきりと片付いた家が多い。余分なものは無い。あっても見えないようにしまってある。日本にだって、きちんと整頓された家はあったけれど、スペースの違いもあるし、ホームパーティーの頻度も違う。日本のホテルやレストランでパーティーをしているのと変わらない雰囲気がここでは一般家庭で、日常に味わえるのだ。
このほど教会の英語講座の先生になったデイビッドから、スモールグループの食事会に誘われてイースターの日曜日、メンバーのショーン家に行った。トレーラーハウスのようだ。文字どおり、トレーラーで運べる家なのだけれど、中は意外に広い。道路の1車線をちょっとはみ出す幅がトレーラーハウスの基本で、それを2つ張り合わせる大きなタイプはものすごく広い。
ここいらの家のベッドルームは、主寝室が10畳以上はあるものの、それ以外は6―8畳程度というのが多いようだ。主寝室には大きなウォークイン・クローゼット、他のベッドルームにもクローゼットがあり、ベッドと家具を1つ2つ置くのが一般的か。ベッドルームは決して広くない。広いのはリビングルームやダイニングルームである。家によってはリビングルーム以外にフォーマルリビングだとかファミリールームだとか、はてはフォーマルダイニングといった部屋まであって、ホームパーティーには最適なのだ。
シャロン家もベッドルームは3つだが、リビングルームが広く、30人以上が楽々と一度に食事することが出来た。日本でパーティーを開くとなると、準備にその家の主婦はきりきり舞いするだろうが、パーティーが日常化しているアメリカでは主婦の負担は決して重くない。
1時を過ぎてからショーン家の主婦キャシーは、冷蔵庫からトリの手羽先の徳用パックを取り出し、何種類もの箱を台所に取り出した。ランチパーティーだというのに、これから料理をはじめるらしい。箱にはポテトグラタンとかチキンナゲットと書いてある。ポテトグラタンは鍋に水と箱の中身をいれて煮るタイプ。チキンナゲットは粉とビニール袋が入っていて、ビニール袋に粉と肉を入れてまぶし、オーブンで焼くというもの。フライドポテト(こっちではフレンチフライズ)もフライドチキンも一般家庭ではオーブンで焼くだけ。油で揚げたりしないという。だって台所が汚れるでしょ?味付けも自分でするより、家族に評判がいいという。「苦労して自分で作っても、箱の方が美味しいって言われるんだもの。箱に限るのよ!」とキャッシー。しょうがをすりおろして、酒と醤油に漬け込んで…という自分の生活が少し空しい。
シンクの下のキャビネットの中には大きなごみ箱、ごみ箱が見えないところにあるというのも部屋が快適な理由なのだった。箱の料理が多いためか、ごみ箱はすぐにいっぱいになった。その家の息子は高校生だが、ゴミを捨てに来て、すでにいっぱいなのを見ると新しいビニール袋を付け替え、ゴミを外にだしに行った。それがごく自然な中で行われたので、私はびっくりしてしまった。我が家では、おとうはゴミが溢れていようと知らん顔である。ゴミ袋がどこにあるかも知らないだろう。男どもはテーブルや椅子をならべている。デイビッドはナプキンとナイフやフォークをならべ出した。おとうはソファーにどっかと腰掛けている。少しは何かを学んで欲しいのだけれど、おとうにはさらさらそんな気はないのだろうなあ。