春の苦労 その2



だいたい、家の影になっているところにスイセンが植えてあって(引っ越した時からあったのよ)日当たりのいい方には何も植えてない。植木のあいだの狭いところにはツツジが申し分けなさそうに植えてある。家を建てた時は苗が小さかったため、十分な隙間を空けずに植えてしまったのだろう。ツツジは大きくなれず、元気がない。だから、我が家は決して見栄えのする方ではない。大家のリンが「私は庭の手入れが苦手でね。今の家は母がしてくれているので助かるわ!」と言っていたけれど、確かに手をかけている家とはまるっきり違うのだ。。おとうが「その気」になっている今、庭の手入れをした方がよい。で、私はある日の午後、草むしりに励んだのだった。

バックヤードにはいつのまにか「ホトケノザ」に似た草がごっそりと生えていた。片っ端から引っこ抜く。タンポポも抜くことにする。母が必死に草むしりをしているというのに、ガキンチョはテイラーも交えてサッカーをしている。情けないほど貧弱なサッカーなので私は悠々と草むしりを続ける。時折ボールが転がってくるのを片足をヒョイッと上げてよけてみせる。ガキンチョはしきりに感心するが、はっきり言って、私がよけられるくらいにしかボールを蹴れないガキンチョが情けない。

かくして、3時間に及ぶ草むしりを終えて家に入ると、鼻がむずむずする。くしゃみが立て続けに出て、その後はピタッと蓋をしたように鼻が詰まってしまった。「鼻で息が出来なきゃ、口ですりゃあいい。」という理論はわかるけれど、どうやら咽も脹れたらしい。息苦しいのだ。かつてひどい花粉症だったことがある。出産と育児に追われるうちにすっかり忘れてしまったのだけれど、これ、立派な花粉症だわよ。

その日、耳まで聞こえにくいような痛いような、ひどい状態になって、私は生きた心地がしなかった。翌日から徐々にマシになってきたので、医者へは行かずにオーバーザカウンターの薬でしのいでいる。花粉症とはいえ、庭の手入れはまだまだ終わっちゃいないのよ。フロントヤードの雑草だらけの所を花でいっぱいにするとおとうは息巻いている。沈丁花とサクラを植える穴を掘ってから、おとうはこれといった活躍をしていない。あれをやれ、これをしておけ、と言った指示は出すのだけれど。ダンナが連日庭の手入れに勤しんでいるお隣りを恨めしく眺めながら、私はマスクをしてせっせと草むしりに励んでいる。