春の苦労 その1



 おとうがサクラを買うと言い出した時、そこいらのスーパーをはじめとして、主だった店の園芸コーナーを見てまわった。サクラは見つからず、ブリッタニーのお父さんに聞いてようやく見つけた。「そのお店は3割くらい割高だよ。でも、種類は結構あるから、みつかるかもしれない」ブリッタニーのお父さんはそう言った。「サクラ切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」と聞いたことがあったが、見つけたサクラは2個所枝が切られていた。つぼみがついてはいたが、長いこと放って置かれたのが歴然としている、そんな木だった。

「前は29ドルで売ってたんだけどね、ここんとこを切っちゃったから19ドル99セントでいいよ」お店のオバサンは煙草をふかしながらそう言った。家に戻っておとうと相談する。「1本しかなかったもんなあ」「あれであの値段はちと高いんじゃないか?」おとうは散々考えた挙げ句、ある日会社帰りに問題のサクラを買って来たのだった。

サクラを植えてしばらくしたある日、「ホームデポにサクラがあった。こーんな大きくて立派なのが17ドル!」おとうは手を思い切り上に上げて叫んだ。その後、Wal-Martでも、生き生きとしたヤツを私も見たのだ。15ドル75セント。どうして私達が買った後で仕入れるのよ!確かに、庭の手入れをはじめるのはこれからだろうけれど、サクラにとっては花が咲いてる時に植え替えられてはたまらないんじゃなかろうか?などと買い急いでしまった弁解をしても始まらない。悔しさを紛らすために、せっせと体を動かすことにした。春を迎えたばかりの庭は、しなきゃいけないことがたんまりあるのよ。