海外送金



 日本の銀行はアメリカへ来る前に依頼した「お留守番サービス」とやらが、いろいろと便宜を図ってくれている。たとえば、登録しておいた口座には、海外にいながら送金を指示できるので助かる。保険やらクレジットカードの支払い、アサヒネットの会費なんぞは銀行の自動引き落としで問題ないのだが、郵便局の保険だけは困ってしまった。銀行から振り込むことはできない、自分名義の郵便貯金から引き落とすこともしてくれない。挙げ句の果てに郵便局の人は「ご両親かご兄弟に支払いをお願いしてはどうですか?」ときた。郵便局に早く金融ビッグバンの嵐が吹けばいいのに、と私は心底思っている。だが、現実として仕方がないので、アメリカに来てからは、おとうの両親に1年に1度、保険の払い込みをお願いしている。今日はそのお金を義父に送るべく、銀行に行った。

サウスカロライナで利用している銀行は、おとうが口座を開いた時、我が家から1マイルの所に支店があったのだが、しばらくしてなくなってしまって、用がある時は車で15分ほどの所まで行かなければならない。もっとも、支店があった向かいのモールにATMがあるし、それ以外にもATMはそこここにあるから、さほど困ってはいないけれど。支店は、空港の先とWal-Martの向かいの2軒が我が家に一番近い。帰りに食料の買い出しも出来るので、Wal-Martの向かいに行くことにした。

チェックの換金などはカウンターで済ませるが、海外への送金は別のデスクで処理される。「日本へ電信でお金を送りたい」というと係の女性は「ちょっと電話をしますね」と受話器を取った。彼女は電話の相手に「海外の送金はしたことがないので、助けてください。」と指示を仰いでいる。どの用紙に書けばいいかから始まって、これはとんでもなく時間がかかりそうな雰囲気。ミーはアメを貰ったのでご機嫌なのが救いといえようか?

電話の途中で、支店の店長と思しきご婦人がデスクの横を通りかかる。電話中の彼女は「海外への電信よ」とささやく。店長らしき人は眼を真ん丸くしてコンピュータのディスプレイと用紙に見入る。カウンターの方からもOverseas?という声とともに人が覗き込みに来る。海外の中で日本が初めてというのなら分かる。最近は、お向かいのWal-Martでもスペイン語が聞こえてくることも珍しくないご時勢である。海外への送金が初めてだなんて、本当にのどかっていうか、イナカっていうか…。

そうこうするうちに1時間。2個所にサインして、無事終了だという。手数料の話も出なかったんだけど、いいのかなあ。ま、なんかあったら電話が来るに違いない。担当の彼女は待たせた詫びと辛抱強く待っていた礼を何度も言っていた。私もミーも3年近くに及ぶサウスカロライナ暮らしで、待たされるのには慣れっこになったのかもしれない。ニコニコと別れを告げて銀行を後にしたのだった。あとは無事にお金が義父に届くのを祈るだけである。