届かない書類
あと1年ここに残れることになって、ビザの延長の手続きに入った。手続きが完了するまでには4―6ヶ月もかかるそうで、まず、延長手続きをしている確認書の様なものが送られることとなった。おとうのは会社が手続きをして、既に本社を通じておとうの手元に届いたのだが、私とガキンチョの分は、約束の2週間がたっても届かなかった。で、仕方なく、移民局の事務所に電話をすることになった。「英語は苦手よ!」とわめいても、おとうは「俺のは届いてるんだからな。ないのはお前とガキンチョのじゃないか」と冷たいのよ。「電話はなかなか繋がらないから、覚悟しとけよな」そう捨てぜりふを残しておとうは会社へ行った。
確かに繋がらない電話である。24時間サービスだそうだけど、いったい何人が担当しているんだか。最近定期購読を始めた週刊朝日を読みながら、ひたすらリダイアルボタンを押し続けた。45分間ボタンを押し続けていた左手は、血液の循環が悪くなって冷たくなってしまったけれど、繋がりゃあ苦労は報われるというものだ。呼び出し音の後、念のためステータスを確認する。やはり2週間待って届かなかったら連絡しろと言っていた。係の人に繋がるまでさらに10分、か細い声の女性が電話をとってくれた。
確認のため、書類の番号と私の生年月日を聞かれた。緊張のあまり1970何年と言ってしまった。正確な生年月日を言い直したら、それまでのか細い声とはうってかわって、豪快な笑い声。「私もいつも若く言っちゃうのよ!」だって。彼女は余計な話になると声がでかいが、肝心の話は聞き取りにくい。仕方がないので、オウム返しで確認する。彼女によると、確認書は既に発送済みで、住所も間違ってないという。「こっちはブリザードでね、私も何日か仕事に出られなかったの。だから郵便もどこかで止まっているかもしれないわ。郵便屋さんだって外には出られなかったはずよ。」とにかくあと一週間待ってみろという。手違いで事務所に戻ってきたら、電話をくれるという。再発送はできないんだそうで、届かなかったらどうなるんだろう。ビザはもうすぐ切れちゃうのよ。届くことを祈って待つことにしよう。私の英語はこれが限界よ。これ以上ややこしいことさせないでちょうだい!