ひな人形



 半袖でも汗を書いていた土曜日とはうってかわって、今日は震え上がるほどの寒いひな祭りである。

毎年、ひな祭りというとガキンチョと折り紙などでひな人形を作るのが習わしになっている。2年前、チーは作ったひな人形をミセス・クインにプレゼントした。綿棒を顔に、和紙を重ねて衣装にしたのである。ミセス・クインはそれをベスト・フレンドのミセス・ホールに見せた。ミセス・ホールは「私があなたを教えるようになったら、私にも頂戴ね」と言ったんだそうである。チーはひな祭りの前夜にそれを思い出した。ミセス・ホールにはリーディングとランゲッジを習っているのだ。チーが折り紙を出して来ると、皆それぞれにひな人形を作り始めた。

チーとミーは、和紙の折り紙を4つに切って、小さな小さなおひな様を作ることにした。(チーは先生4人にプレゼントするって言うし、ミーの担任は2人いるし、和紙の折り紙は貴重だもの。)カオとノンは大きなままで作るようだ。折り紙の本を見ながら、ワイワイやっているとミーが「これ知ってる!」と言う。土曜日の補習校で作ったんだそうな。小さなミーまでが器用に折り紙で犬だのきつねだのを作ると、こっちの人は思いっきり驚いてしまう。日本人は手先が器用だと良く聞くけれど、少なくともサウスカロライナ辺りの子供は不器用である。ミーは結構上手にひな人形を折りあげた。厚紙の上に金色の折り紙で作った屏風を立て、母が切った冠や尺、烏帽子、扇をつけたおひな様をくっつける。想像以上に素晴らしい出来栄え。ミー自身がびっくりしている。

ひな祭りの今日、ミセス・スミスとミセス・ヒューストンに渡した。案の定、口をあんぐり開けてびっくりしている。ミーはこの日、おひな様を持って、アートの先生の所やら、あちこちに引っ張りまわされたらしい。学校から帰ると「疲れたー」と言って大きなため息を吐いた。今夜はガキンチョの好物、ちらし寿司でねぎらってやることにしよう。