呼ぶ、呼ばない



 去年チーは自分の誕生日会にクラスの女の子全部に招待状を出した。一人を除いて。私は、その一人が自分だけ招待されなかったと知ったらどんな気持ちになるだろうと考えると、ちょっと気が重くなった。「シャレンがパーティーに来ると自分だけではなく、お友達が迷惑する。」チーとは何度も話し合ったが、「呼びたくない」の一点張りだった。その子シャレンに不愉快な思いをさせないように気を使うことを約束して、チーは誕生日会を開いたのだった。

シャレンは態度が悪いのだという。人から借りた物でも投げて謝ろうとしないのだという。チーは彼女と話したことはないそうだが、友達にも乱暴で、気の小さなチーは見ているだけで恐いという。5年になってシャレンとまた同じクラスになり、そして彼女の家族のことなど、少しずつ話すようになったらしい。

「シャレンのお母さんね、まだ29歳なんだって!離婚してね、でもボーイフレンドがいるの。もうすぐ赤ちゃんが生まれるんだって。男の子でね、シャレンの嫌いな子と同じ名前をつけることになったって。ヤダなあってシャレンが言ってたよ。」その後もいよいよ赤ちゃんが生まれたとか、その赤ちゃんがかわいいとか、いろいろ話をしたらしい。時折、人を気遣ってやさしく接するようになったシャレンにチーはとても驚いていた。「こんなに優しくなれるんだったら、去年も呼んであげれば良かったなあ。」よくよく考えた末にシャレンを呼ばなかったチーだけれど、心の中ではずーっと重い物があったようだ。「今年は呼んであげる。こられるかどうかわからないけどね。でも、ウチじゃなくてスケート・ステーションでパーティーしよう。シャレン、声が大きいんだもの。ウチではしゃがれたら、うるさくってたまらないもの。」

カオはこの間の誕生日会でケイティーを招待しなかった。ケイティーからは誕生日に招待されていたし、確か去年は呼んだはずなのだけれど。ケイティーは当日になって自分が招待されなかったと知って、がっかりしたそうな。ケイティーのちょっと怒ったような、さびしそうな顔を見てカオは後悔した。「今日これからお母さんがいいって言えば来ていいんだよ!」私は言った。ケイティーはパーティーが始まって30分ほどしてから来てくれた。ケイティーのお母さんは「プレゼントはお迎えの時に持ってくるわね。」と言った。私がプレゼントなど構わないと言うと「ウチにあるものを探すわ。探すのも楽しいから、そうさせてちょうだい。」で、カオの欲しがっていた「ぽちっちになるたまごっち」を持ってきてくれた。ケイティーは「物置にあった物でごめんね。」と言って渡してくれたそうな。

たかがガキンチョの誕生日会と侮ってはいけないのよ。結構複雑な人間模様が渦まいているのだから。その渦の中で、みんなで思いやりの心を身につけていって欲しいものである。