賞金10ドル!



 恒例のピザ・サパーの会場で私は2枚の賞状を渡された。ノンとチーの名前が書いてある。これに先立って、JSN主催で「世の中にはドラッグより素晴らしい物がいっぱいあるけれど、でも、こうなったらもっといいなあと思うこと」という主題で絵や文学、写真等のコンテストがあり、それに入賞したのだった。そう言えば何日か前、作品を州のコンテストに出す旨の書類にサインしたっけ。その時はチー、カオ、ノン3人分だったんだけど…。良く見ると、賞状にはクーポン券がついている。「レンタルビデオ1ドル引き」これはチーの方。ノンの方は「10ドルのチェック!」

絵は締め切りまで時間がなくて、ガキンチョは大急ぎで学校へ持って行った。実は持って行った日に締め切りが1週間伸ばされたと知ってガキンチョは気の抜けたような顔をしていたのだけれど。ノンにいたっては、15分ほどでざっと描きあげたので、はっきり言ってあまりよいデキだとは思えなかった。それが10ドル!ピザをたらふく食べた後、廊下に貼り出されている作品を見に行った。

「ちょっと待てよ。これか?これが10ドルだって?何かの間違いだろう?チェックを良く見てみろよ。ノンの名前か?ホント?これが?まさか!」おとうは本人を前にしてずいぶんんな事を言う。ノンは「自分が魔法の杖を持っていたらいいなあ」という題で絵を描いた。鉛筆の下書きに色鉛筆でうっすらと色を塗った。近視気味の私には30センチくらいに近づかないと何がなんだかわからない。ノンと思しき女の子が棒を持って立っている。回りにはハートがいっぱい。親バカな発言をすれば、「ノンは魔法の杖で、みんなを幸せにしようというんだな。心の暖かな子だ!」となるけれど、やはり10ドルも稼げる絵かとなると心苦しいものがある。「間違いだから返してくれ」と言われないうちに(?)早速銀行に行って10ドルのチェックを換金した。(ノンは緊張のあまりかSaitoをSatioとサインしてしまったのよ。それでも問題なくお金はもらえたけど。)

昨日ガキンチョが持って帰ったニュースレターによると、ノンの絵はK−2年生の部門の3位なんだそうだ。チーはいわば佳作、カオは入選というところか。1位は25ドル、2位は15ドル、そして3位のノンは10ドルを貰ったのだ。ニュースレターを見ていたノンが友達の名前を見つけて聞いた。「チェルシーの絵はハングしてなかったよ。どうしてここに名前があるの?」で、絵以外にも、写真や詩、作文などの部門があることを教えてやった。「ふーん」ノンは遠くを見るようなまなざしで答えた。10ドルに味をしめたノンは、次からは絵だけでなく、片っ端からエントリーするに違いない。餌で釣るアメリカの教育の典型ともいえる。