寄付はお断り、したいけど



 我が家のあるこの住宅街はとても治安がよく、バックヤードのみならず、フロントヤードでも子供たちが安心して遊んでいられる。だから、とっかえひっかえ寄付集めがやってくる。ガールスカウトはいいとして、留学生の奨学金やら、ドラッグ追放運動だの・・・・。たいていお菓子やジャムや本などを売るのだけれど、マクドナルドのハンバーガー券を売りに来たこともある。あれは確か、少年サッカーチームの寄付で、かおの同級生のお兄さんが母親と一緒に売りに来たのだ。アメリカでは家にはポストにも名前が出ていないのが普通だから、この時も私たちの顔をみて「ここがカオルの家だったのか!」とびっくりしたのである。「娘が毎日のようにかおるの話をしています。とても良い友達が出来てうれしく思っています。」そうなると断りにくい。つい10ドルをはたいてしまった。(これはハンバーガーを1つ買うと同等のハンバーガーがただでもらえるという券が20個付いていた。結構得をしている。)

 だいたい断るのって難しい。これまでどれほど高いクッキーを買ってしまったか!おとうはその度に文句を言うけど、おとうもけなげな女の子から高ーいジャムを買ったんだ。たいそうなことは言えない。

 あー、思い出すのも嫌だ。ある日、50絡みの化粧っけのないおばさんがすぐ近くにある消防署の寄付を集めに来たのだ。警察にも寄付したことがあるから、そのノリで寄付をした。するとおばさんは「これにはただで写真を撮れるクーポンが付いています。家族の写真ともうひとつはヘア・メーク付きであなたの写真がとれるものです。」と言う。あたしゃ化粧は嫌いだよ!といらないというと、「ぜひ」としつこい。ちーも「ただならいいじゃん」という。「お化粧の予約だけでも撮っておいたら?トッテモタノシイワヨ」

 思い返すと、これが悪夢の始まりであった。