Healthの宿題



 チーの宿題は、相変わらず凄い量と質である。たいてい、私の手に負えないものばかり。この間のは、参ってしまった。算数に始まって、社会やらランゲッジやらリーディングやら、量がものすごいし、最後に出てきたヘルスなんて辞書にない言葉ばっかりなんだもの。

チーは、そのHealthで今、循環器の勉強をしている。血液と心臓についての宿題だった。血液って言っても、ヘモグロビンくらいなら、たとえ英語だって見当がつく。でも、「3種類の白血球のそれぞれの働きを述べよ。」となると、日本語でだって説明できないのよ。挙げ句の果てに、「その3種の細胞の絵を描け。」「白血病が、人間の体をどのように蝕んでいくかを説明せよ。」と来たもんだ。教科書には出ていない。自分で調べろだって!チーは5年生なのよ!こーゆーのは、もっと高学年になってからでいいんじゃなあい?

チーはHealthを含むScienceが、イマイチ好きではないという。担当のミセス・テイラーとほとんど話をしたことがないらしく、たまに質問をしても、誤解されたり、何かとコミュニケーションがうまくいかないそうな。苦手だと思うと、余計うまくいかなくなるという悪循環はアメリカにいても一緒なのよ。私がミセス・テイラーと一度話したのだけれど、「Scienceが嫌いだって言う子が多い中で、チーはよくやっている。」と言うことだった。まあ、よくできたらう―んと誉めて、励ましていくしかないだろう。

さて、白血球の方は、何とかインターネットで調べて一段落した。これで眠れると思ったら、「まだあるよ。」Healthの教科書を持ち出してきた。質問は4つ。心臓の働きについてだ。3つは教科書に書いてあることをまとめればいい。こういうことはもう、母の出る幕ではない。4つ目、「心臓移植と人工心臓のどちらを選ぶか」と言うヤツ。もちろんチー達は医学生でも何でもない。だから、医学的な選択ではないのはわかっている。が、「臓器移植法」なるものが施行されて、まだ3ヶ月ほどという国に育った人間にとっては、こういう問題が、いや単語が5年生の教科書に出てくることだけで、驚きなのだ。日本で、心臓移植をタブー視してきたことが、驚く土壌になっている。結局、心臓移植と人工心臓の利点と問題点を挙げて、どちらがより良い選択かを言えばいい。チーは問題がHe or Sheとなっていたから、「携帯電話やその他の電子機器で人工心臓が狂ってしまうと困るから、ずっと薬を飲まなくちゃいけないのはつらいけど、心臓移植の方がいいと思う。」と書いたんだそうな。そして、下にカッコをつけて、「でも、私はどちらも嫌です。自分の心臓で頑張れるように大事にしたいと思います。」と書いたんだそうな。これ、大正解よね!?