懲りない盗み食い
子供が隠れて何かイケナイコトをするというのは、こりゃあまあ、成長過程においては必要なことであるかもしれない。山一証券が2千何百億円もの簿外債務とやらを隠していたのとは違うのよ。子供の場合は、ごまかし切れていないというのも愛敬がある。
ハローウィンで集めたお菓子はいまだにかぼちゃのバケツにどっさりあって、リビングボードのてっぺんに乗せてある。私は手を伸ばすと届くのだが、ノン、ミーは椅子を持って来ても届かない。
ある日、私がベッドルームの掃除をしているあいだ、ミーは子供部屋でビデオを見ていたはずだった。リビングルームに行ってみると、食堂にあるはずの椅子がリビングボードの前に置いてある。ははーん。「ミー、届いた?」私が子供部屋のミーに声をかけると、ミーは情けない顔をして「届かなかった。」と言った。椅子を戻しておけば、と思うのだけれど、そこまで知恵が回らないのだ。
ハローウィンに配ったお菓子もだいぶ残っていて、それはガキンチョのとは別のバケツに入っている。それは一応「お母さんの!」ということになっていて、食べるには私の許可が必要である。同じ日、学校から帰って、私がカオとふざけ、ノンが宿題をし、チーがぼーっとしていると、ミーが母のひざをカオから奪うべくやって来た。プーンとチョコレートの匂いがする。 ミーの手の届くところにあるチョコレートと言えば「お母さんのバケツ」に違いない。「ミー、いい匂いがするねえ。おいしい?」母は聞いた。ミーは口をぎゅっと結んだまま泣き始めた。
「一人で食べないで、ネエネたちの分も持って来てあげてね。」ミーはうなずいてバケツの方に言った。まだ口を結んだまま泣いている。ミーが持って来たのはナント3種類のチョコレート菓子だった。匂いからはそんなにたくさんのお菓子を食べたとは分からなかった。が、ごみ箱には確かにその3種類の包み紙が捨ててある。正直と言うか、幼いというか…。3人のネエネの分を揃えると言った。「あのね、いっぱい内緒で食べちゃったの。」そして今度は堂々と茶色くチョコレートの残る歯を覗かせて大泣きした。
隠れて食べたって美味しくないと思うんだけど、何回言っても懲りないヤツだなあ。でも、かわいいと思っちゃうのよ。親ばかで結構、コケコッコー!