お風呂
寒い日が多くなってきた。気温だけで言えば最低がマイナス2―3℃で、朝は車のガラスが凍り付いている日もある。緯度はロサンゼルスと変わらないのに気候はえらく違うのだ。もっとも同じくらいの緯度に位置する福岡も冬は寒かったっけ。こっちは湿度があるからか、寒い中を歩いたり自転車で飛ばしたりしないからか、暖房が家全体を暖めてくれるからか、東京より過ごしやすいとは思う。
でも、寒くなるとお風呂でのんびり暖まっていた日本がちょっと懐かしくなる。我が家にバスタブはついているものの、お湯の量に限りがあるし、汚れを洗い流すだけのそっけないお風呂なのよ。とにかく、湯沸かしの中のお湯が空っぽになると20分待たないとお湯は出てこないのだ。親子6人の入浴はお湯と時間とのにらめっこであわただしいことこのうえない。で、がきんちょは2人ずつ入ってもらうことにしている。アメリカに来た2年5ヶ月前、がきんちょは「えーっ、やだー!お尻を洗わないで入るの?」と悲鳴を上げていた。「郷に入れば郷に従え」のとおり、がきんちょはすぐに慣れ、反対にこの夏日本に帰った時、湯船にすぐ飛び込もうとしたがきんちょに日本のお風呂の入り方を教えなくちゃいけないほどだった。
寒くなってきたのだから、お風呂はさっさと済ませなさい。母は毎日念仏のようにがきんちょに言っているのに、がきんちょは聞く耳を持たない。昨日もちーとみーはなかなか出てこなかった。ぼちぼちかな?と思っていた矢先、ちーが「シャンプーがない!」と言う。掃除の時チェックした限りでは、あと2―3日はもつと思っていたのだけれど。私が新しいシャンプーを持っていくと「みーがね、シャンプーの中にお湯をドバーっと入れちゃってね、使えなくなっちゃったの。」とちー。みーは硬い表情のまま「だって、もうないと思ったんだもの。」と言う。シャンプーを渡してバスルームを出て行こうとすると、ちーの声が聞こえた。「ね?お母さん、怒らなかったでしょ?」
お風呂から出てきたみーの髪を拭きながら、「シャンプーくらいじゃ怒ったりしないから、お風呂は早く済ませてね。」と言っておいた。日本では狭い狭いと大騒ぎしながら、たまにがきんちょみんなとお風呂に入って騒いでいたっけ。あれも楽しかったなあ。サウスカロライナの暮らしは快適で大好きだけれど、ふっとため息が出てしまった。