しつけ
ミス・ケイのレッスンの中で、子供の虐待の話が出た。最近の日本では母親による幼児の虐待が問題になっているが、アメリカでは父親によるせっかんが殆どであるという。アメリカの家庭といってももちろん一口には言えないのだけれど、お尻を叩くというような体罰が健在な家は意外なほど多い。ミス・ケイもその昔父親にお尻を叩かれたそうだ。叩くのはもっぱら父親の役目で、母親にしかられた後で「部屋でお父さんの帰りを待ちなさい。」と言われたそうな。躾とはいえ、ミス・ケイにとってはイヤな記憶だという。
アメリカでは日本より躾が厳しい。親に対しての言葉づかいにもうるさいし、約束を守らなかったり、悪いことをした場合はいろんなバツが与えられる。1週間遊べなかったり、ビデオを見ることが禁止されたり、子供部屋から出ることを禁じられたり(食事抜きよ)。私なんぞは意志がよわいから、がきんちょが反省している様子を見ると、「わかったら、もういいから…。」なんて言って許してしまう。ところが、アメリカのたいていの親は自分が言い渡したバツをちゃんと最後まで通すのだ。
この間、遊びに来ていたブリッタニーをお父さんが迎えに来た。お父さんは真面目な顔をして「悪い子だったら家に帰ってお尻を叩かなきゃいけないな。ブリッタニーは悪い子だったかな?」とかおとブリッタニーを見て言った。かおはあわてて「いい子だったよ。ブリッタニーはずーっといい子でなーんにも悪いことはしていないよ!」と答えた。お父さんは「そりゃ、よかった。」と笑った。
お尻を叩くという行為が理性的にコントロールされている場合は躾と言っていいのかも知れない。私なんぞは人間がまったくできていないから、叩いてしつけるなんていうのを通り越してカッとして自分の感情をぶつけてしまうことになるだろう。お尻を叩くことが健在だと知って、「アメリカのお父さんの多くはちゃんと感情をコントロールできているのか!」と半ば関心していた。ところが、どうもそうではないらしいのだ。
10月の最初のウィークエンドにワシントンで開かれた"Promise Keepers"の集会の大規模なことはサウスカロライナでも報道された。「躾だと言って子供をたたいていたが、実はそれが自分の感情に任せた暴力だったことに気がついた。」と告白した父親。それにうなずきながら涙を流す大勢の男達。ちーは言った。「お尻を叩くのって、old-fashionedなんだよ。」別の日、新聞には「地方では、経済的に苦しく、教育にも無関心で、暴力的に躾をしようとする古い考えの家庭がまだたくさんある。」とあった。
躾は確かに難しいのだ。ちっとも片付かない部屋、いっこうに進まない通信教育、つじつま合わせの補習校の宿題、がきんちょを見ていてため息が出てしまった。どうすればいいんだろうねえ。