Fコレクター



ちーの勉強は本当に難しくなってきているようだ。アメリカの子供たちでも5年生と言うのは"壁に突き当る年#と言われているほどで、なのにその5年生の教科書を飛ばして6年生の教科書にいきなり入るんだもの。しかもアメリカに来てたった2年のちーをそういうクラスにぶっ込むなんて無謀以外のなにものでもない、と私は思うのよ。

実際ちーの続々とかえってくるテストはFばかりだった。ミーティングで先生は「テストでCを取ってきてもそれで良いと思ってください」と言った。Accelerated Classの子はAばかりを取っていた訳だからCだって相当なショックなのだろう。だけどうちはFだぞ!Fは最低のランク、落第点なのだ。ちーの落ち込み方はすごかった。「おとうさんにも妹たちにもFの話は内緒にしておいて!」ちーは思いつめた顔でそう言った。

Fの原因はもちろん英語力によるところが大きい。ボキャブラリーがとにかく不足しているのだ。それから先生の英語になれていないということも大きいかもしれない。ちーは「テストの問題の意味が全然わからなかったの。どう答えていいのかさっぱりわかんなかった。これじゃFコレクターだよ!」と言った。それと、あまりのペースの速さにちーのやる気がついていかなかったのも事実だと思う。散々こぼしてちーは少しすっきりしたようだ。そして悔しくもなったらしい。「ランゲッジ担当のミセス・ホールに相談して、頑張ってみる。」と言った。

ミセス・ホールは大喜びで翌日の放課後時間を割いてくださることになった。いつもより遅くちーを迎えに行くとミセス・ホールは「ちーは今週のボキャブラリーを皆理解していますよ!」といってくださった。ちーも「明日のテスト頑張ってみる!」と勇ましい。「先生がこの分だと100点取れるかもしれないって!」とうれしそう。おまけに「Fをたくさん取った話ね、お母さんの“主婦の声”に書いていいよ!」だって。こうしてお許しがでたから、今日ご紹介できるのよ、この話。ちなみにそのテストは100点だったそうで、ミセス・ホールがちーにだけ結果を教えてくれたのだ。もちろんこれでFと縁が切れた訳ではあるまいが、こうしてどんどんたくましく成長していく子供を見るのは、実に感慨深いというものだ。爪の垢でももらって煎じた方がいいかもしれない。