みー、学校に行く その1



 家庭訪問があるのはK-4だけである。年度始めと終わりの計2回ある。ミセス・スミスとミセス・ヒューストンがやってきたのは、おとうがお昼を食べ終わって会社に戻った後だった。

 みーは先生を待ちかねていて、最初から妙にハイになっていた。普段はしないのに、テーブルに座ったり、お行儀が悪くて恥ずかしいことこの上ない。

 ミセス・スミスとはのんの登園拒否で散々話をしたので、英語が苦手な私もどういう訳か勘が働いて、彼女が何を言っているのかだいたいわかる。みーのこともよくわかってくださっているので、夏休みの話や日本との違いやのんの話が次から次へと出てくる。緑茶を出したら、のんの時の家庭訪問以来だと懐かしそうにしていらした。

K-4は午前と午後の2クラスがある。実は隣りの学校にはK-4がなく、午前のクラスは隣りの学校区の子供たちが通っている。のんがK-4だったときは、午前クラスにアキがあったため、そちらに行っていた。K-4のときのクラスメートでのんと同じ小学校に行っているのはアレックスとトーリだけだ。今年は隣りの学校区の生徒が多く、したがってみーは午後のクラスに入ることになった。

実は近所(隣りのサークル)に中国人の一家が住んでいる。そこの長女もみーのクラスメイトになる予定である。ミセス・スミスによると、メキシコから来た子もいるそうで「今年はインターナショナルクラスなのよ!」と嬉しそうに言ってくれた。「嬉しそうに」というのは重要である。のんは登園拒否の際、思いっきり迷惑をかけていたのだ。泣く、わめくでは収まらず、なだめようとする先生を殴る、蹴る、さらに廊下を走って脱走しようとする、とまあこんな具合。今年だってそういうのが最悪3人出るかも知れないっていうのに、嬉しそうにしてくれたのだもの、感激である。

午後のクラスは11時30分に始まり、2時に終わる。午前のクラスは歩いてお迎えの場合は学校の中のクラスのドアまで行かなくてはいけなかった。午後の場合はバスライダーと一緒に先生が校舎の外まで連れてきてくれる。私は我が家から一番近いドアのところで待っていればいい。

ミセス・スミスはみーに聞いた。「K-4に来るの、楽しみ?」みーは目を大きく見開いてうなずいた。ミセス・ヒューストンが「みーの好きな犬のぬいぐるみをおもちゃばこから出しておきますね。いつでも遊べるように。」みーはまた大きくうなずいた。英語しか通じない中で、自由時間もなくしつけの厳しいK-4でみーがどれだけ楽しめるかわからないけれど、貴重な経験になることは確かである。