クラス分け;かおの場合



3ヶ月にわたった夏休みが過ぎ、新学期が始まった。その2週間前に1年間の費用(小学生は一人28ドル)とランチチケットを買って、新学期までに用意するもののリストをもらった。その時にクラスがわかるのだが、かおは期待していたミセス・クインのクラスではなかった。かおはがっかりし、担任になるはずのミセス・アレキサンダーとは話をしたことがないと言って、とても不安がった。「特定の生徒と仲良くなり過ぎるのもいけないんじゃないの?」と私の母は電話の向こうで言った。本当にそういうことなのか?

新学期の初日、かおは緊張して学校に行った。ミセス・アレキサンダーはかおを見つけるとすぐに「かおる、おはよう!ミセス・クインのところに挨拶に行きたいでしょう?ミセス・クインも待ってるわよ」とかおを隣りのクラスに連れて行った。ミセス・クインはそりゃもうまるで生き別れになっていた親子のようにかおを抱きしめキスをした。そして私に「後で話をするから」と言った。

放課後話を聞きに行ったが、かおがミセス・クインのクラスに入れなかったのはかおがイーグル・プロジェクトの生徒だからなんだそうだ。ミセス・クインのクラスにはイーグルの生徒はいないということだ。イーグル・プロジェクトは学校の授業を割いて行われる。だから、プロジェクトに参加する生徒は参加しない生徒と別のカリキュラムになるのだ。それを聞いてちーは「それで途中でアレキサンダー先生のクラスからクイン先生のクラスに変わった子がいたんだ!」と納得したように言った。

生徒たちは9週間毎に成績を持って帰るが、成績の良かった子の名前は学校の廊下に貼り出される。いつも貼り出される名前の数がクラスによって随分偏っているのが不思議だったのだけれど、成績の良い子を集めたクラスがあるってことだったのね。もっとも成績がよくてもプロジェクトを希望しなければクイン先生のクラスになれたかも知れないわけで、実際、ミセス・クインは私に「かおるがどうしても大変そうだったらいつでも変えられるから…。」と耳打ちした。もっとも、かおがブリッタニーやマーディーやマッケンジーのいる今のクラスで自分の居場所を見つけてくれるのが一番良いのかもしれないと思う。ミセス・アレキサンダーの温かさにもちゃんと応えて欲しいし…。

それにしても、小学校の3年生でそーゆークラス分けをするなんて思わなかった。この学校では1・3・5年生が終わる時に進級試験があって、よほど成績が悪いと落第をしなくてはならない。たとえば九九(こっちでは3年生で習う)を覚えられない子は特別に先生がついてマンツーマンで教えてくれたりする。サポートは十分にしてくれるのだ。それでも落第はそう珍しいことではない。だから、親も子もやる気がない場合に落第することが多いといえるかもしれない。そしてその反面、できる子、やる気のある子はイーグルのようにどんどん勉強をさせる。できる子とできない子の差がどんどん開いていっちゃうのではないかと心配になるけれど、周りの誰からもそういう声は聞かなかった。