Mentholatum
夏、一時帰国した際には、常備薬をいろいろ買い込んだ。たいていのものはこちらで間にあわせているけれど、カッコントウとかなじみの胃腸薬は日本で調達するのだ。オーバー・ザ・カウンターが充実しているアメリカでは(医療保険が充実していない裏返しだけど)驚くほど多様な薬が驚くほど安く買える。ただ、私たちよりはるかに体格の良い人たちも使うのだと言うことを考えると、安易に使いたくないと思う。
日本で買い込んだ薬を見ておとうは「おい、メンソレータムを買わなかったのか?」と叫んだ。「いつだったかPストアでメンソレータムというのを見かけたことがあったから、買わなかった。」と答えると「アメリカにあるはずがねえ!」と一蹴されてしまった。確かに手にとって見たわけではないので、「見間違えたにきまっている」 と言われるとちょっと自信がない。で、食料の買い出しついでにメンタム探しをすることになった。
メンソレータムの歴史はどれくらいになるのだろうか。私は百年を超えているとふんでいる。私の祖母はメンソレータムを「万能外用薬」としてそれこそ肌身はなさず持っていた。メンソレータムがロート製薬に身売りされて(だったかどうか、詳しくは知らないけど)メンタームと言う名前になるずーっと以前から、祖母は時折メンタムという愛称で呼んでいた。とにかくこの祖母にとってはメンソレータムとキンカンとリュウカクサンが薬のすべてではないかと思うくらい、大事な薬だったのだ。こういう薬は土地によって少し変わるようで、おとうの実家では「オロナイン」が幅をきかせていたらしいし、愛知出身の知人によると「キップパイロール」だという。この「キップパイロール」は私が京都にいる折に近所の薬屋のおじさんにすすめられて使ったっけ。京都といえば近江兄弟社のお膝元ともいえる土地なのに…!と思った覚えがある。
さて、Pストアにはやはりメンソレータムが売られていたのだ。28g入りが2ドル69セントでアメリカの薬としては高い。が、おとうに見せなきゃ気が済まないので、早速買ってかえった。日本では万能外用薬でも、アメリカではヴィックス・ヴェポラップと同じ扱いである。風邪で鼻が詰まったり、ノドが痛かったり、咳が出る時に塗るように書いてある。あかぎれや皮膚のちょっとした炎症にもいいとはあるけれど、申し訳程度に書いてあるような気がする。成分はカンフル9%(日本のは9%60%)、メントール1%3%(同1%35%)である。おや?日本のに入っているはずの「ユーカリ油」がない!早速それに気づいたおとうは「こんなのインチキだ!」と言う。別にいんちきでも何でもないとは思うけれど、そう言われてにおいを嗅ぐと日本のよりクセがないようだ。
鼻の下にチョビッと塗ってみる。シーハーして風邪気味の私にはなんとも心地よい。それにしても、元祖はどっちなんだ?近江兄弟社の創立者は確か外国の人だったと思ったけれど%%%。
PS;その後、Xストアでメンソレータムが1ドル96セントで売られているのを見つけた。70セントも損をしてしまったのだ!さらに、となりには子供用のメンソレータムが置いてあった。これは「風邪による鼻詰まりと咳を和らげるために胸に塗れ」とあり、肌荒れや唇云々はまったく見当たらない。成分はカンフルが4%7%、メントールが2%6%、そして何とユーカリ油が1%2%であった。チェリーの香りつきだそうである。