かお、クマを作る



私は何とも不器用な人間で、裁縫や手芸にも趣味がないし、必要に迫られてしたとしても実に情けない結果しか出てこない。日本では学校や幼稚園でどーゆーわけか布の袋がたくさん必要だった。上履き入れだとか体操服入れ、給食袋にランチマット。防災ずきんカバーなんてのもあったっけ。そーゆーのを作るのが、そりゃもう大変だったのよ。「買えばいい」って?そりゃ売ってるけれど、幼稚園はちーとかおが同時に入園だったし、その後ものん、みーと続くのがわかっていたから、高い既製品には手が出なかった。ちーの入学の年はのんの入園も重なった。周りの人たちは2人分せっせと縫っている私を見て、「好きなのねー!」と言ったが、それはものすごい誤解である。あたしゃ影で泣いていたのよ!

さて、最近どういうわけかがきんちょが何かを作りたい!と騒いでうるさくなった。実は去年のクリスマスにちーが小さなクマのマスコットを作ったのだ。フェルトで刺繍糸も針もセットになっているのを買って作った。デキははっきり言うのがかわいそうなくらいだったけれど、本人もその友人たちもなかなかのものだと思っていたようだ。私も糸と針を持つのが初めてだったのだから、そんなもんかいな、と納得することにしたのだった。

今年は「かおかおも何かをしたい!」ときかない。で、自分でクマの絵を描いてそれを型紙にして家にあるフェルトでマスコットを作らせることにした。

今まで、ホームページにたびたび登場しているので、心暖かい皆様はきっとかおを応援してくださっていることと思うが、こいつは本当に面白いヤツである。クセモノというのが実にふさわしい。いま当然のように補習校の宿題は溜まっているし、九九はもちろん覚えていない。私はこの夏何度彼女に「面倒くさいことや嫌なことでも、コツコツやらなきゃいけないことがあるのよ!」と言っただろうか。母の忠告はいつも空しく、彼女の耳に入ることはなかったのだった。ところが、彼女はクマのマスコットを上手く、実に器用に作ったのよ。3時間かかって。縫い目もていねいで、コツコツ文句もいわず、作ったのよ!本人は「目がちょっとかわいくない」と言ってるけれど、私はとっても可愛いと思う。それより何より、縫い方も一度説明するとすぐに覚えてしまうし、応用も利く。そして、周りがしっかり縫ってあるから詰めた綿が顔を出すこともない。かおはまえから自分の好きなことにはとても忍耐強く、頑張り屋なのだということを知ってはいたけれど、あらためてあの子の特性を見せ付けられた思いがする。

好きなことをしている時のかおの集中力は本当にうらやましいくらいだ。だから本当は「好きなことが一生懸命できればそれで十分だ」と私はかおに言って好きなことをたくさんさせてやりたいのよ。漢字や九九が面白いって思えれば一番いいのだろうけれど、あいつはあまのじゃくだからなあ。もっとも、現地校で習ったことはしっかり頭に入るようだから、掛け算に関して言えば、現地校で習うようになれば何とかなるに違いない。

「漢字ドリルやったら、またクマを作ってもいいよ。」と言ったら、しばらく考えて答えた。「2個作ってもいい?」好きにしなさい。「じゃ、2個と言わずいっぱい作ろう!」かおは久々に漢字を書き始めた。