ショットは恐いのよ!その2
アメリカでなくてもがきんちょにとって注射は恐怖である。上二人は「終わったら飴を買おうね」なんて言う言葉でつられてじっとがまんし、暴れることはなかった。だから、集団接種の会場で泣き喚いて暴れる子供をみると「聞き分けのない子だ。親がちゃんと説明しないのかしら?」なんて思っていた。まさかのんとみーがそのタイプだとは考えもしなかったから。
日本では個別接種に切り替えているところが多いそうだが、私たちがいたころはもっぱら集団接種だった。地域センターなるところへ行って受けるのだけれど、のんは地域センター前に"接種会場#という紙がはってあるテーブルが出ているのを見ただけで身体が硬直し動けなくなった。もちろん字を読んで恐くなったわけではないけれど。引っ張るように会場に入るころには思いっきり泣き叫び暴れまわる。生まれて間もないみーをスナグリに入れて抱っこしていたので、逃げようともがくのんを抱きかかえているのははっきり言って大変だった。おまけにみーも泣き出すから、周りの注目を浴びること、浴びること。中にはあからさまに嫌味をいう保健婦サンもいて、つらかったなー。以来、私はどんなに泣き叫ぶ子を見ても偏見を持ってはいけないと自分を戒めるようになった。
友人の中には「注射だって言わないで連れてっちゃえば?」と言ったのもいたけど、私にはできなかった。子供の信頼を裏切るのが恐かったのだ。私がいつでも正直で嘘をつかないことこそ、がきんちょを正直な、嘘をつかない人間に育てる唯一の方法だと思っているから。どうしても必要な注射なんだと一生懸命説明して、本人もそれなりに理解して、でも、いざとなると恐くて暴れるのだった。
2本3本まとめて打つのが普通のアメリカだから、受けた本数の割に行った回数は少ない。でも、どんなに泣き叫んでも嫌な顔をするナースはいなかった。終わった後で「良く頑張った」とシールやプラスティックのコップをくれた。開業医じゃなくいわゆる保健所でこれなのよ。だから、母はとっても気が楽なの。今までだって、親ばかな母は「こんなに暴れられるなんて、素晴らしい根性だ。頼もしい。タダモノではないな。」なんて思っていたんだけれどね。