ワインは旨い、はずだった
おとうは4年以上に及んだ禁酒生活にピリオドを打った。成人病検査で引っかかって始めた禁酒が効を奏して肝機能が元に戻り(数値の上で)、飲みはじめる機会を伺っている昨今だった。
一時帰国した際、おとうの母が「心持ち血圧が高くなってねー」と言っていたのでおとうはホームページでいろいろ調べたらしい。「赤ワインが効くらしいぞ。血圧をさげるし、コレステロールにもいい。」どこにでてたの、そんなこと。「メルシャンワインのホームページ」さもありなん。なんだかわざわざ自分に都合のいい話を見つけてきたような気がしないでもないけれど、「ジジババに言う前に自分で実験してみてみよう。」ということになった。
4年間の禁酒のあいだにおとうはすっかりアルコールに弱くなっていた。最近ではデザートに食べるゼリーのリキュールにもホンワカいい気持ちになるほどで、赤ワインを一日一合飲むなんてこと、できっこない。で、その半分90CCから始めることにした。「これは薬なんだ。」とみんなに言い訳をして、食事の時に飲む。がきんちょから借りたあひるの絵の付いたコップで、あひるのくちばしのところまでが90ccなんだけど、どうもそんなに飲めそうもないということで、翼の付け根のところまでにするんだそうな。「おまえは90飲んでいいから」あっ、そう。
さて、私の方はしばらく「妊娠、出産、育児」のサイクルが続いていたから、おとうの4年をはるかに超える12年の禁酒生活なのよ。最近じゃ、ノンアルコールビールにもクラッときてしまう。そうか、ノンアルコールといっても1%未満ではあるけれどアルコールが入っているのねー!と大発見。さすが、アルコール探知器!その私にも「薬だから飲め」とおとうは言うのだ。「しょーがないなー」と飲んだのはいいけど、やはり食事の後片付けがおっくうになる。「それじゃ寝しなに一杯やれば?」とあくまでも私を引きずり込みたいおとうはしつこく誘う。私は昔からアルコールを飲むとかえって目が冴えて眠れない。ガーッと飲むと、1時間くらいは眠ってもその後眠れない。そんな体質だったのだ。そして、それは変わっていなかった。たった90ccのワインで2時過ぎまでお目めぱっちりの私は、翌日睡魔との闘いに明け暮れたのだった。だから、おとうにも言っておいた。「一人で勝手にやっとくれ」なのにおとうったら今日も新しいワインを抱えて帰ってきた。「かーちゃんが飲んでもすぐなくならないようにデカイのを買ってきたぞー!」本当に頼むから一人でやっとくれ!!!