EAGLEプロジェクト
日本から戻ると現地校から手紙が届いていた。かおにEAGLEプロジェクトのスクリーニングテストを受けさせるように、というものだった。EAGLEプロジェクトはちーからも話を聞いたことがある。3年生以上の成績優秀な生徒が参加でき、各クラスのメンバーは週1回集められて勉強をするのだ。かおはずっと全教科Aだったからスクリーニングを受ける権利があるということらしい。このプロジェクトは学校群で取り組んでいるもので、テストはのんが入りそこねたL校で行われる。(注;主婦の声、子育て「のんが転校?」参照)
「勉強」と聞いてかおは急に元気がなくなった。ちーは言った。「でもね、ゲームをしたり工作をしたり、楽しそうだよ。飴を貰ったこともあるってローリーが言ってた。」ゲンキンなかおはニコニコしはじめる。「テスト、受けてみようかなあ。」
かおは結構神経質なところがある。テストと聞いただけで緊張してしまっている。私は本心から言った。「アメリカへ来てたった2年で、スクリーニングテストを受けていいって言われるなんて、それだけですごいことだよ。英語ができるようになったって言っても、こっちでずっと育った子のようにはいかないもんね。どんなテストか見るだけでもいい。できなくても構わない。行っといで。」
とはいったものの、長いこと留守にしていたからテストは2日後に迫っていた。こりゃ電話で申し込みをしなくてはならない。おとうは「電話しとけよな。」と言って会社へ行ってしまった。EAGLESのスクリーニングを受けようかっていう子の母がしどろもどろではみっともない。なんてことを考えると余計緊張してロクなことにならないのよ。でも、教育委員会への話は無事に通じて、かおはテストを受けることになった。いつも思うのだけれど、私の場合、話す相手のご厚意に支えられて成立してるのよ、会話は。
テストを終えてかおはすっきりした様子だった。「ライアンがいたよ。それからね、先生がティッシュを持ってなくってね。教室にもなくってね。かおかおのをあげたんだよ。」日本から戻ってすぐだったので、ティッシュとハンカチを持って歩く習慣が残っていたのだった。
「先生ね、テストの時かおかおのそばばっかりいるんだよ。でね、テストを覗いてばかりなんだ。」え?もしかして「あのしどろもどろで電話した母の子ってのがばれてんのかな?」まさか、ね。