ちーの誕生日その1
ちーの10回目の誕生日はとんでもない幕開けになった。
ちーのクラスで飼っていたハムスターを夏休みの間、有志が順番で預かることになっていた。ちーはその1番手で、2日前からリビングルームの片隅にケージをおいていたのだった。そのケージはハリソンが昔使っていたもので、そこいら中、テープで補強してあった。ハムスターの名前は「バニキュラ」。本に出てくるんだそうな、そういう名前のウサギが。ドラキュラの映画を見ている時に見つけたウサギだから「バニキュラ」なのだが、今ウチで預かっているのは正真正銘のハムスターである。ただし、今まで見たこともないほど、デカイ。はっきり言って運動不足だと思う。
運動不足は壊れたケージに一因がある。ついている車(中に入ってまわすヤツ)が壊れていて回らないのだ。今では食品貯蔵庫兼、彼の寝室になっている。もう一つの原因は彼が噛み付くことにあると思う。皆、怖がってケージの外に出そうとしないのだ。かわいらしい顔をしているけれど、歯は恐ろしいほどに鋭い。
預かってすぐ、みーが多分ケージをいじっていたんだと思う。ケージの外側につけられた車が外れてバニキュラが顔を出した(らしい)。まずいとおもったみーは自分の手でバニキュラを押し戻そうとして指をかまれた(らしい)。「どうしよう!」みーは叫んで、母ならぬちーのところへ行こうとした。自分にやましいところがあるってことかな?。母を甘く見るんじゃないぞ。みーんなお見通しだよ!「逃げちゃったの?」母は優しく聞いた。「逃げそう!逃げちゃうよ!」母は急いで外れた車を付ける。私はそのくらいのことじゃ絶対怒らないのに、どーして隠そうとするんだ、ウチのがきんちょは?
そういうことがあったから、バニキュラには気を付けなくっちゃいけないと思ってたんだ。そして、ちーの誕生日の朝、おとうの「ネズミが逃げた!」という叫び声で6時前にたたき起こされることになったのであった。もう一度言っておくが、バニキュラはハムスターである。