ウソ
子供部屋の掃除を終えてリビングルームにいくと、みーがサササッとネズミのようにキッチンを横切るのが見えた。みーはお腹にいるとき「ネズミちゃん」と呼ばれていた。みーという呼び方はまだ満足にしゃべれなかったのんがそう呼んでいたことに由来する。「ネズミ」が「イズミ」に変わっただけなのよ。だから、ネズミみたいでもしゃーないって?
でも、大人を甘く見てはいけない。私にはみーが飴か何かを口に入れたのが直感で分かったのだ。たとえば、思わぬところから、飴が見つかったとする。そういう時、ち―とのんは母のところに持ってくる。が、ふところならぬ口にほうり込むのはかおとみーである。その昔、かおは姉妹の追求にも「知らない」ととぼけた。口いっぱいに甘―い匂いがしているのに。
私は、そんな時子どもをしっかと抱きしめて、おやつを決められた時にしか食べてはいけない理由を説明する。虫歯になってしまうかもしれない。食事が進まなくなってしまうかもしれない。最悪の場合「毒入り」だったらどうしよう。そして、たずねるのだ。「隠れて食べて、おいしかった?」その昔、かおは言った。「ドキドキして恐かった。あんまりおいしくなかったよ。」
今回、み―はラムネ菓子を食べた。小さなラムネが10個ほど並んで包んである。それを一気に口に入れたのだ。「ちょっとおいで」そう呼ぶそばから情けない顔になってしまった。しっかと抱きしめて、説明した後で、みーにもたずねてみた。「おいしい?」みーは口いっぱいでなにもしゃべれない。「一つずつ食べた方がきっとおいしいよ」私が言うと涙をぽろぽろこぼしてうなずいた。
子どもにウソやごまかしはツキモノといわれればそれまでだけれど、少しずつエスカレートしていくような気がして不安になる。いったいどうしたものか。子育てって難儀なもんだなあと思うこのごろである。