鎮痛解熱剤
ある土曜日、私がおとうに頭痛を訴えると「薬でも飲んで働けや。主婦に休息はない!」とのたもうた。アメリカではこう言う会話は成立しない。離婚率が高いのはそのゆえに違いないと思っている。
さて、哀れな主婦はゴロゴロする夫をにらみつけながら薬を取りにいった。げーっ!薬がない!そういえば、このところ薬に頼らなければいけないほどの頭痛がなかったために、薬がなくなったのを忘れていたのだ。哀れの代名詞のようになった主婦は頭痛だっつうのに鎮痛剤を買いにぶっ飛ばねばならなかった。幸いなことに車で3分の所にあるグローサリーに薬はある。日本だったら、自転車で15分か?
ところで、薬を買うとき困るのはどれにするかなかなか決まらないという事である。今までのは「タイレノール」という商品であった。れっきとした商品名なのだけれど、アメリカでは鎮痛解熱剤の代名詞になっていて、医者が「この処方せんの薬とタイレノールを服用してください。」てな具合に使われる。この場合、処方せんの薬は薬局へ行って買うのだが、タイレノールはオーバー・ザ・カウンターで、いわゆる鎮痛解熱剤を買って飲めと言う意味である。
今からかれこれ15年くらい前、アメリカでタイレノールに青酸カリ(だったと思う)が混入されて、死者が出るという事件があったのをご存じだろうか。普通こう言う事件が起こるとその商品は消費者から敬遠される。ところが、タイレノールの経営陣は事件の報告、警告、タイレノール製造から販売まであらゆる情報を公開し、混入への対策も早急に決定し、公表した。その姿勢が消費者の信頼をえて、この事件以後、売り上げものびて現在の地位を得たという次第である。
タイレノールにも強さと形と量でいろんな種類があって、選ぶのが大変だ。一番強力なヤツは安くなっていた。私の欲しい「ふつうの」 効き目のは割り引きの対象外だ。うーん、やはり鎮痛解熱剤は健康なときに買い置きしておくべきだった。ひどくなる頭痛をこらえて棚を見ていると初めて目にする薬で、安くなっているのがあった。50錠入り(25回分)4ドル99セントがお得意様カードで3ドル99セントになる。しかもメールイン・リベートがある。メールイン・リベートとは箱の中にある紙と所定のもの(バーコードとレシートが定番)を同封して送るとチェックでお金が戻ってくる仕組みで、この薬の場合は3ドルのリベート。つまり3ドル99セントで薬を買って、3ドル戻ってくると99セント。プラス切手代32セントで、薬が1ドル31セントで買える計算になるのだ。
痛い頭でここまで考えるとは主婦根性もなかなかのもんだと自画自賛して家に戻る。相変わらずゴロゴロしているヤツがいる。私は自分の誕生日にもクリスマスにも母の日にも七夕にも「お母さん、プレゼント何がいい?」と聞かれるたびに「やさしい夫」と答えているのにいまだにその願いは叶わない。どんなによく効く薬よりも「ゆっくりおやすみ」という一言の方がどんなにいいか!知ってるか?とんちゃん!