ハリケーンが近づいていた。ここは海岸から200マイルほど離れているので、ハリケーンの被害はあまり聞いたことがない。ここで起こり得る被害はもっぱら竜巻によるものである。ところが今回はサウス・カロライナに上陸し最悪の場合は直撃という予想なのだった。
おとうは今週とっても忙しくて、昼食にも帰ってこられず、夜も10時くらいになっていた。だから、車のない私は買い出しにもいけず、途方にくれていた。会社でもようやくハリケーンの噂が出たらしく、おとうは水曜日の6時頃戻ってきてくれた。大急ぎで近くのスーパーに車を飛ばす。今まで見たことがないくらい車が多い。考えることはみな同じなのであった。野菜を中心にどっさり買い込むと、家へとんぼ帰り。おとうはミーティングがてらレストランへいってしまった。
木曜日、学校では天候が悪くなって学校が休みになる場合の注意を校長先生が放送したそうである。内容を理解できなかったちーは、担任のミセス・ワルデンに尋ねた。先生は下校の時、ちーと一緒に出てきて私に説明してくれた。
「朝6時過ぎに、テレビとラジオで学校が休みになるか、遅れるかが放送されます。ケーブルテレビは3チャンネル、ケーブルではないのなら10チャンネルをみてください。ラジオはパブリック・ラジオなどです。」
校長先生の"after 6 o'clock"という言葉でみんなどよめいていたので、ちーは6時に学校が始まるのか、と思ってしまったらしい。「まさかねえ、そんなはずないよね?」今でも朝は充分つらいのだ。これ以上早く始められてたまるか!
かおはいつも金曜日にもってくるはずの手紙を1日早く持って帰ってきた。「もし、明日学校がおやすみになると困るので、今日この手紙を渡します。」と書いてあった。Ifを見落としたかおは「明日はビデオがみられる!」と喜んでしまっている。
夜のニュースでは、サウス・カロライナとノース・カロライナの海岸沿いの人達が避難する様子を写していた。子供たちはハリケーンの恐ろしさより、学校が休むになるかもしれないことに夢中だった。空は少しどんよりとしていた。
翌朝、私はいつものとおり5時半に起きた。風が少し強いがハリケーンがコースを変えたことはあきらかだった。当然のことながら、学校は休みにはならなかった。6時40分にそのことを告げながら、おとうと子供たちを起こすが、がっかりして起きる力も出ないようだった。10チャンネルのニュースではハリケーンが上陸したノース・カロライナの様子が映し出された。「サウス・カロライナは好運でした。」というアナウンサーの言葉に、最初は「アンラッキーでしょ!」といっていたちーだが、壊れた家をみて声を失っていた。
強い風の中、学校へ向かった。「わー、あってよかったな、学校。」ちーは言った。
のんた