ぽぽこ 3

 獣医へは連れていかなくっちゃいけないとは思っていた。でも英語で電話して予約を取らなきゃいけないのがイヤだったし、ぽぽこをくれた人も「獣医は高いぞ!」と脅かすものだから・・・。で、半年たってしまった。重い腰をあげて電話をしたが、予防注射で40ドル取られた。年に何回かショッピング・モールの片隅や学校で狂犬病の予防注射をやっている。それはわずか3ドルだ。おとうはさかんに文句をいう。「俺たちはカモか?」そうカモしれない。しかし、ぽぽこの年齢もわからないし、避妊もしなきゃいけないだろうし、獣医に見せなきゃしょうがないのだ。10日ほどお隣に餌の面倒をみてもらって、旅行をしたのだが、その間にもぽぽこはひとまわり小さくなってしまった。予防注射の追加接種をして、血液検査をした。ぽぽこはフィラリアにかかっていたのである。
 「300ドルかかります。」医者はいった。おとうはつぶやいた。「俺たちはカモか?」そうカモしれない。だけど治療は必要だ。「お願いします。」というしかなかった。
 フィラリアは蚊が媒介する寄生虫で、卵や幼虫は血液の中にはいって循環する。成虫は心臓の中で大きいものは14インチにも達するという。虫が血液の循環を妨げるようになると、内臓が弱り、放っておくと死に至る。治療はヒ素を静脈注射して、まず成虫を殺す。4週間安静を保った後、卵をやっつける薬を経口で与える。ヒ素のときは2日間入院した。4週間の安静は犬小屋をデッキの脇に置いてよしずで囲い、鎖でつなぐことで良しとした。(段ボールで作った犬小屋は、運悪く翌日が雨ですぐだめになった。とても良い出来で、ぽぽこも子供たちもそして私も気にいってたのだけれど。慌てておとうがプラスチック製のを買いに走ってくれた。50ドル近くしたそうだ。)子供にはぽぽこの病気をきちんと説明し、ぽぽこが走ったりジャンプしたりしてはいけないことを納得させた。医者はぽぽこがまだ1才半と若く、感染も6ー8カ月前と推定される、という理由でそう深刻な病状には陥っていないだろう、と言った。結局、予防注射から今までの治療に488ドルかかった。おとうはぼやいた。「俺たちはカモか?」そうカモしれない。
 ぽぽこは今元気だ。フェンスの下を掘っては隣の家に入り込んだりして困らせることはあるけれど。この場合はジャスパーの家ではない。反対のneighborである。私たちが学校へ行くのを見かけて後を追うのだ。おとうはフェンスの下に置く材木を買いにいかなければならなかった。それにしても、掘るのがうまい。庭のあちこちに穴が掘ってある。埋めるための土も買わなければいけない。おとうは叫んだ。「金喰い犬め!」