ぽぽこ 推定1才半の場合
ぽぽこは1月29日からうちの子になった。
「犬を飼う。」とは、おとうがアメリカへの引っ越しを嫌がったかおに言い出したことである。おとうはもともと”口だけ”というところがあって、犬も例外ではなかったのだと思う。だけどハローウィンの翌日から始まったのんの登園拒否に”犬”が一番効いたのだ。
「のんが泣かないで幼稚園に行けるようになったら、ワンワン飼おうね。」
姑息とも思える言い方だが、もう他に手はなかった。1月にはいってから、のんは「嫌だけど、行く!」と頑張るようになってしまった。幼稚園が終わると「泣かないで行ったから、ワンワン飼おうよ。見に行こう。」と言う。さすがのおとうも子供の信頼は失いたくないらしい。ひとまず、その気があることを見せるべく、”ペット・アドプション・センター”へ2回ほど通った。そこは引き取り手のない犬や猫を25ドルの手数料で譲ってくれる。健康で、予防注射と避妊・去勢手術が済んでいる。子犬から成犬まで50匹近くいただろうか。だが、ここでは決められなかった。おとうにその気がなかったし(でも子供はまだ信じてた)子供たちも、たくさん居すぎて目移りしてしまったのだ。それに、このあたりはほとんどの家で犬を飼っているが、ダルマシアンだの何とかテリアだのビーグルだの、純粋な犬がほとんどで、センターの犬は雑種なのだ。
まずいことにおとうがめんどくさがってきた。ヘタすると犬なんて一生飼えないぞ!!!!!そんな時だった。チャイムがなった。男の人が黒い犬を抱いていた。後でわかったことだが、彼は2軒先にすんでいるのだった。
「おたくの犬ですか?このあたりをうろうろしているのですが・・・。」彼は言った。
「違います。うちでは犬は飼っていません。子供たちは飼いたがっているんですけれど、だんながあまり乗り気じゃなくって・・・」。英会話の練習にとついつい余計なことを口走ってしまったのがよかったのか、悪かったのか・・・。彼はにっこり尋ねた。
「小さい犬がいいの?」
彼の抱いている犬は毛並みは良いけれど落ち着きがなさそうだ。確かに子犬のように見えるが、大きくなりそう。こんなの押しつけられたら困る。
「そう、ちいさいのがいいんです。」
彼はにやっと笑って言った。
「いるんだ、ちいさくて白いのが。ワイフの両親が高速道路で見つけたんだ。見たかったらいつでも連れてくるよ。空港の近くだから10分くらいで行ける。」
予想外の展開に慌ててしまった。いつか見せてもらおうという意味で、「オーケー」と答えたのだ。まさか15分後に犬を連れてくるとは思わなかった。
「気に入らなかったり、だんなが嫌がったら返してくれていい。」
彼は犬を私に渡すと、「グッド・ラック」と帰って行った。それがぽぽこだった。