みーは今3才5カ月だ。日本にいれば幼稚園の年少になっているはずである。ここへ来たときには、まだおむつをしていた。おとうはどの子の時もきまって「こいつはしゃべるのが遅いな」と言った。みーの時もそうだった。確かに、早生まれということもあって年少から幼稚園に入れるのがちょっとかわいそうな気もしていた。ここへ来て、プレ・スクールに入れようとも考えた。そんなとき、教会へ行った。こっちの教会はベビー・ルームがしっかりしていて親は心おきなく礼拝に参加できる。が、みーは10分もたなかった。彼女の泣き顔は見ていられないくらい情けない。人の同情をかうのである。4番目くらいに生まれると自然にそうなるのかも知れないけれど・・・。で、ベビー・シッターが私たちを呼びに来た。礼拝を逃げられるとふんだおとうは、普段見せない素早さでみーの部屋へ急いだ。おとうに抱かれて落ち着いていたみーだったが、礼拝をすませた母をみてまた大泣き。よほど堪えたらしい。いつかは慣れる、ということはわかっていた。でもあの泣き顔をみるともう一度預けようとは思えなかった。以来、私といつも一緒にいる。だから、英語はなかなか覚えなかった。日本語も拙いままで「おなかういたよ」「のごかわいた」と言っては、「おなか、でしょ」「のど、でしょ」と父にしつこく言い直されていた。
 そんなみーが最近たくさんしゃべるようになった。もちろん日本語だが。ほかの子もうるさいくらいにしゃべるようになってしまったから、みーだっていつかはおしゃべりになることは、母にはお見通しだった。しかし、それと平行して英語もぼちぼち出始めたのである。幼児が言葉を使い出すときは、「まんま」「わんわん」など単語ひとつからはじまる、2才近くなると「わんわん、きた」などの二語文が出るようになる、というのが一般的な発達過程である。が、みーはいきなり英語のセンテンスから話し始めたのだ。
 "I'll be back soon, OK?"
 "What are you doin'?"
意味を完全に理解しているものはまだ少ないけれど、単語から始まるとばかり思い込んでいた母はぶっ飛んでしまった。発音はもちろん、いい!後何年いられるかわからないけれど、とてもたのしみなみーである。