別れはつらいのよ by ; Noriko



 大家のリンが家を売ることにしたので、引っ越しの準備をはじめたあたりから、不動産屋が客を連れてくるようになった。たいてい電話で都合を聞いてからやってくるが、留守番電話に入っていたメッセージを聞き忘れていたりすると、食事中やら、洗濯物を思いっきり広げているときやら、間の悪いときに限って客がくる。おまけに不動産屋のいくつかは6月1日に家が空くと勘違いしていたので、いきなりやってきたケースもある。彼らは鍵を持っており、(鍵といっても、それは携帯電話のようなもので、どんな仕掛けなのかわからないが、我が家の玄関ドアにかけてある箱状のものが何やら怪しい。)私たちの留守にも入れるという。ヤードセールの直前などは、散らかっているだけではなく、貴重なものも所狭しと置いてあるし、間違って壊されてもいやだし、何より、こっちだって気が立ってるし(?)で、何件かは断った。

 さて、ホームページでも何度も書いてきたことだけれど、ガキンチョも私もここを離れたくないのが本音なのである。今の家は6人家族には小さいのだが、それでもずっとそのままでいいとさえ思っていたほどである。だから、リンが家を売ることに私たちが言うことは何もないとはわかっているものの、家を見にくる人たちの中で、できれば感じのよさそうな人が買ってくれたらなあと思ってしまうのだ。ガキンチョはベッキーたちのために、できれば性格の良い同世代の子供がいて欲しいと願っている。

 だれがあの家を買っても、あの家にとって私たちはもう本当に関係のない存在になるのだ。今まで引っ越しには慣れていたはずの私だが、今回は心の中にすっぱりと割り切れないものが残っているように感じる。家にも、多分学校にも愛着が強すぎたのかもしれない。それほどこの4年間を一生懸命過ごしてきたのだと自分を誉めてやるしかないのだろうか。