今年は水不足で、芝というか雑草というか伸びなくて都合がよい。しかしThunder Storm がくると一気に伸びてしまう。芝刈りは結構大変だ。芝刈り機の自走式の奴を買わなかったから。
そんなある日、Front Yard の伸びた芝を見つめていると調子のよさそうなガキが通りかかった。ガキは5ドルで芝を刈ってやるがどうかと持ちかけてきた。頼む奴がいるのかと聞くと、ポケットからドル紙幣を取り出して3日間で200ドル稼いだと自慢を始めた。相場では3ドルくらいと聞いたことがあったので、Back Yard も会わせて8ドルでどうかと値切った。ガキはぶつぶつ言いながら、Back Yard の広さを確認すると、「広すぎる、これなら合計で10ドルくれ」、となかなかの役者である。10ドルと言えば、2千円から3千円の価値があり大金である。
ガキは買え欲しさに、すぐに家から芝刈り機を持ってきて、「Front はきょうやらせてくれ」と言った。芝刈りきはやや大きめの奴で、Grass Catcher がついていない。刈った芝をばらまかれる。この方式のことをマルチングという。これは、どうも雑草の種もばらまかれるようで、気に入らない。ガキは手際よく芝を刈った。10分もかからなかった。気に入らない。刃の位置が高すぎる。これで5ドルは高い。しかし、気温は40℃近くありガキは汗だくだ。Back Yard の時、注文をいっぱい付けてやることにして今日は勘弁してやろう。
あしたBack Yard をやるように頼んで、気前よく10ドルを前渡しした。ガキをなめてはいけなかった。このガキBack Yard の芝刈りに来なかったのだ。サギだ、うそつきだ、どろぼうだ、と騒いだところで、名前も聞かなかったし、住所も、電話番号も聞かなかったのでなすすべがない。判っているのは、同じNeighborhood の家のガキ、という事だけだった。
この芝刈り小僧、一カ月程たった頃、うちの子供にとうとう見つかった。家族全員から、お金を返してもらうか、Back Yard を刈って貰うかしないと駄目だ、とプレッシャーをかけられ、ついに対決の時が来てしまった。相手はガキだが英語はうまい。ヘタをするとなめられる。おまけに向こうは他の二人の遊び仲間と一緒ではないか。ガキの方にゆっくり歩いて行く。そして言った。"How y'all doin'?"、これ、オリンピックの人文字のセリフに採用された。
ガキは、その場では「あしたやる」と言っていたのが、翌日一言も言わず5ドルを返しに来たそうだ。結局、狭い方のFront Yard だけをやって5ドルは良い商売だ。しかし、この辺を英語でガキを相手に交渉して1ドル返してもらうような元気は無い。前払いをやめるしかないと思う。
おわり。