カオのけんか



「さあ、今日学校でこうに言われたけど、何のことかわからなかったり、こうに言いたかったけど、どう言っていいか分からなかったことは有りませんか?」 「はーい」 「はいっ」 「はい、カオカオ」 「あのね、今日ランチの前に並んでいるときに、XXXがしつこくするので、嫌だったんだけど、なんて言っていいか分からなかった。」 「そういう時はねえ、Stop it とか Don't do that とか言えばいいんだよ。もっと恐い声でNever do that again って、ライオン・キングが言っていたのを覚えている?」 「覚えている!」 「じゃあ、ご一緒に、Never do that again.」 という様な調子で、毎晩やっていたトンの英会話教室が無くなってから1年以上経ったかも知れない。最近では、 「XXXから電話が来てもお父さんでないでね」 「どうして?」 「だって、XXXがお父さんの英語がへただから意味がわかんないから、でないで欲しいって言ってるから」 「じゃあ、カオカオだったら、いいっちゅうわけ?」 「うん」 「えっ? カオの方が英語がじょうずだっていう事?」 「うん」

カオはShyなので外ではあまり話さないのだが、ある時マクドナルドでそこに来ていた見知らぬ子と大げんかをした。風船の取り合いだ。まず、パーティかなんかで逃げられた風船が天井に浮かんでいた。これを大きなプレイ・セットに登り、中から手を伸ばし、巧みに下へ下へと風船を降ろしていき、見事に捕まえたのだった。それを椅子に縛っておいたが誰かに取られた。今度は違う風船をまた捕まえた。がまた取られた。今度は現行犯だ。しばらく、じーっと睨んでいたが、ついに始まった。その子の所に行って何か言い始めた。口論が始まったようだ。その子も素直に返す気配がない。手が出るか、蹴りが出るか緊張の一瞬。

カオの手がさっと動いた。殴るなよ。。。。カオは素早くひもから風船をはずして、風船を奪い取ったのだ。ひもだけになってしまった子は顔色を変えて、何故か私の所にとんできた。来るなバカ。注目されるではないか! という人の気も知らないで、私に何か言った。全然わからない。

しょうがないから、はあ? と言ったら、今度は自分の父親の所に行った。父親は黙って横に首を振っている。大げさにならないうちに帰ろう。風船は店のものだからということで、店に置いたまま店を出た。その子がさあっと、風船の方に走るのが見えたが、見てみないふり。

家に帰ってからチーの解説を聞くと、結構互角に口論したようだ。相手は白人の女の子で年下のようだったがずいぶん成長したものだ。あと一年もしたら、返すことを説得できるようになるかも知れない。