Declaration of Independence の奇跡



今日は90点は取れたと思った最後に魔がさした。運転手との会話から解放され、あれだけ乗って30ドルかと安心しつつも、その30ドルさえかき集めないとない、という複雑な状況の中でDeclaration of Independence のレプリカをタクシーに置き忘れてしまったのだ。金額が問題では無かった。9回の表まで3対0で勝っていたのに、裏でさよなら負けするようなものである。

唯一の手がかりは、貰った名刺である。仮に連絡がついたとしても、どうやって受けとるのだ。どこかで待ち合わせか? まさかホテルに届けるといってもこっちは翌朝チェックアウトしなければならない。家だか会社まで訪ねるのだって相当苦労するのはあきらかだ。まあ、一応電話してみる。おっと、留守番電話だ。子供が言う。おとうちゃん、英語がうまいねぇ。冗談じゃあない。こういう嫌な役目をいつもやらされているから旨くなったのだ! くやしかったら、自分でかけろと、ほめられたのに機嫌が悪くなる。

だいたい、留守番電話にメッセージを残してまともに返ってくることは少ない。特に相手の特にならない時は、まず返信はと思った方がいい。この間の医療費の請求だってそうだ。261ドル返してくれ、と何回かけても返事はない。たまにしつこくかけて担当者を捕まえると、2週間かかるとか、もうそろそろだとか、たぶん明日だとか言って、もう3ヵ月くらい経っている。未だに261ドルは返ってこない。

しょうがない、こういう時は景気よくパーっと飯でも喰いに行こうと電話帳をチェックしているとカーンから電話が来た! これからホテルに届けるから15分くらい待ってくれ、だった。 彼の家はここからそんなに遠くなかったのだ。チーはお礼にお菓子をあげようと、持っていた日本のお菓子を包み始めた。しばらくして、カーンは奥さんと子供と多分母を連れてホテルにレプリカを持って来た。斎藤家は総出で出迎えた。カーン家は、きっとこれから家族で外食似行くのに違いない。カーンは言った。

"Sorry about that. I should check."
"No, that's my fault. Chi has something for your child."
"What's that?"
"....." (ここはチーが蚊の泣くような声で何か言ったような言わなかったような)
"O.K. Thank you. Have a good evening!"
"You, too. Thank you very much."

9回の裏で打たれた満塁ホームランは、打者がホーム・ベースを踏まなかったために無効になったのだ。