とにかく、生活のためには車が必要であった。理想的には妻と
私と1台ずつがいいけれど、取り敢えず最初に家族6人が乗れる
安全な車を1台買う事にした。条件は、6人分ヘッド・レストが
ついていて、追突された場合にも安全なように第3席の後ろにも
十分なスペースがあること、であった。ちなみに追突というのは
"Rear Ended" と言うのだそうだ。 そうとは知らず、バック・
クラッシュとかバック・アタックとか訳のわからない事を多くの
セールスマンに言ってしまった。いろいろ見たり乗ったりした結
果、Dodge の Grand Caravan 96 Model しかない、という結論に
達した。時は、1995年5月3日の事であった。場所は、Dodge
である。

到底キャッシュでは払えないため、ローンの利率と頭金の見当
をつけるためセールスマンに見積って欲しいと言うと、ローンは
別会社になっているので、ペイパー・ワークが必要ということで
いろいろ信用情報を書かされた。頭金は1万ドルにした。納車は
6月10日として、それまでレンタカーを手配してくれる事が条
件である、と明記してもらった。利率が算定されるまでに数日要
するとの事であった。

この時、セールスマネジャーが出てきて言った。3000ドルの
ダウンペイメントが今日できるか?

これは、6月10日の納車を引き当てるために必要だという。こ
れがないと6月10日の納車は保証できないという。こっちとし
ても家族が来るまでに車は欲しい! このDown-payment は、もし
車を買わなかったら戻すというので、Do not cash と念を押して、
3000ドルのCheck を切った。まだ、4月15日に到着したば
かりで、会社の住所で作った銀行口座には500ドルしかなかった。
この事は、セールスマンも知っているのだが、マネージャーには
何も言わない。それどころか、マネージャーがいなくなってから、
私の駆引きを誉めてくれた。フォードに乗っている"Rear Ended"
を教えてくれたこのセールスマンは、私の味方であった。

疲れた。日本で新車を3台買った経験があっても車の売り方が
日本とはだいぶ違う。とにかく、数日で利率さえわかれば、後は
モデルやオプション等を調節して支払い能力に応じた車が買える
であろう。まずは第一ステップ成功! セールスマンがChineese
Food をおごってくれるというので、それでも車を買うとは限ら
ない事を念を押して、5月5日に昼に会うことにした。

5月5日の夜に話が急転回するとは、思いもしなかった。