アメリカは近かった


いよいよサウスカロライナに帰る日が来た。休みはいつもあっという間に終わる。それなのにとても疲れる。もう朝鳴っているラジオが聞こえないくらい疲れて来ていた。最初にトロントの空港で車を返さないといけない。しかし地図をみて驚いた。何と3つも空港があるではないか。どの空港から来たんだっけ!?

最初の日の行動を思い出し、空港までを逆にたどってみる。きっとこの空港に違いない。空港の近くまで来ると空港情報ラジオをやっていた。ラジオを付けてみたが全然聞き取れない。しばらくして気がついた、フランス語だった。HertzのおじさんはデルタならT1を目指せと言っていた。そう目指すはTerminal-1であった。

いままで空港で車を返すことは結構なれている。ざーっと、5、6ヶ所の空港で車を返した経験がある。どの空港でもCar Returnとかのようにしつこいくらい看板が出ているものだ。今回は空港への道順もそうだが、ましてやCar Returnの看板は1個所小さいのが出ていただけであった。そこまで行くには、Terminal AdministrationがCar Returnを含んでいるのだろうという想像に頼るしかなかった。

やっと車が返せたら、今度はデルタのチェックインでトレーニーのような人にあたってしまった。途中で操作がわからなくなり、別の人に教わってはじめからやり直し始めた。こういう人に限って動作が遅い。しかし、度胸はいい。別の客の冗談にじっと耳を傾けて笑っている。もちろん、その間は手が止まる。操作を教えてくれた人が、見兼ねて、Are you O.Kと聞いてもニヤニヤするだけ。どこにもおかしな人はいるものである。

頭の中にはアメリカに戻る為の手続きは簡単だ、という認識があるから、デルタのカウンターで税関申告書を渡されながら荷物を持って税関に行けと言われてもピンと来なかった。自分でチェックイン荷物をX線のコンベヤーに乗せて通過した後、近くにいたおじさんに聞いた。
「どこにチェックイン荷物を置けばいいのか?」
おじさんは、「デルタか?」とか聞きながら手で書類を見せろというしぐさをしたので搭乗券や税関申告書を渡した。おじさんはその中から1枚の紙を抜き取りながら言った。
「あそこにおけ」
おじさんの前を通り過ぎ、荷物を言われたとおりにコンベヤーに置いて、しばらくして気がついた。あっ、さっきのはアメリカの税関だ。税関申告書は名前さえ書いていない白紙だ。税関はアメリカに戻ってからだと思っていたのでまだ何も書いていなかったのだ。まずい!

当然のことのようにアメリカの入国手続きも税関の次にあった。トロントからアトランタに行く時は、アメリカの税関も入国手続もトロントでやるとは知らなかった。もちろんアトランタでは国内線ターミナルに到着したのだが、なぜかコロンビアSC行きは国際線ターミナルから出ていた。

おわり