太陽の使者 鉄人28号 こばなし・その15 〜 みまわり 〜
異常発見。
PM 11 時 42 分。コース048。ポイント2038。熱源アリ。
緊急時プログラム03ニ移行。
状況ヲ確認スル。
「やあゼロハチ。見回りごくろうさま」
音声一致、“マスター”。
ランク、“最優先”。
「ゼロハチ。通常モードに移行。これは異常ではない」
コレハ異常デハナイ。通常モードニ移行。
「こんばんは、ゼロハチ。そのサーチライト、切ってくれないかなあ」
音声一致、“ショウタロウ”。
ランク、“最優先”。
サーチライトOFF。
「ありがとう。あー目がチカチカしますよ」
「うっかりしたな。ここは見回りコースから外しておくべきだったね」
「そうですね。……ゼロハチ。ほら、上を見てごらん」
カメラ角度修正。上90度。
「ね。今夜は星がきれいだろ?」
「はははは。正太郎くん。夜空に感動できるよう作ってやれたら、最高なんだがねえ」
「ゼロハチだってわかるんじゃないですか? こんなにきれいな星空、めずらしいでしょう」
「そう簡単にはいかないんだ。ロボットに美しさを理解させるには……」
「あーもう静かにして! こんなとこで講義をはじめないでちょうだい、パパ」
音声一致、“マキコ”。
ランク、“可能ナラ優先”。
体勢認識。室外デ倒レテイル。
異常発見。
救助モード01ニ移行。
『マキコ。救助シマス』
「えっ、なに?」
「ゼロハチ。通常モードに移行。これも異常ではない」
音声一致、“マスター”。
異常デハナイ。救助モード解除。
「もおゼロハチったら。あっちへ行きなさい!」
「いいじゃないか、せっかく会ったんだしさ。ゼロハチ、一緒に星を見ようよ」
“ショウタロウ”。体勢認識。室外デ倒レタ。
異常デハナイパターンカ確認。
『マスター』
「はははは。ゼロハチ。ここで起きていることは、すべて異常ではない」
体勢認識。室外デ倒レタ。
「ゼロハチ。上を見て、星を観察してみなさい」
「ゼロハチ。今夜はペルセウス座流星群の日なんだよ」
「静かにしてってば! ぜんぜん集中できないじゃない」
「はりきってるなあ、マッキーは。そんなにお願い事があるんだ?」
「当たり前。いーっぱいあるわよ」
「なになに?」
「ひ・み・つ」
「ちぇーっ。ケチ」
「お」
『2時ノ方角。光ガ移動シマシタ』
「えっ」
「どこどこ!? ゼロハチどこ?」
「カシオペア座の真下だったよ。けっこう長かった」
「パパほんと!? あーもう、正太郎くんが話しかけるから見逃しちゃったじゃない!」
「まあまあ。まだいっぱい流れるって」
「正太郎くんは黙っててちょうだい。あ、ゼロハチは喋っていいわよ」
「なんだよピリピリして。はかせ、マッキーはゼロハチにまかせて、あっちでのんびり話しながら眺めませんか」
「わたしはみんなで楽しみたいんだがねえ。牧子?」
「……ごめんなさい。喋っていいわよ。無視するから!」
「ぼくも、ごめんって」
4分、20秒。4分、30秒。4分、40秒。4分、50秒。
「「あ!」」
『3時ノ方角。光ガ移動シマシタ』
「見た見た? きっれ〜い!」
「さっきよりも長かったよ」
「やったー。マッキー、お願いできた?」
「あっ」
「あはははは」***
「やあ、ゼロハチ。見回りごくろうさま」
音声一致、“ショウタロウ”。
「おかしいな。何か異常でもあったのかい?」
音声一致、“マスター”。
『異常アリマセン』
「わかった! はかせ。ここって、ほら、このまえ一緒に星を見たとこでしょう。ゼロハチ、だからじっと空を見てたのかい?」
「正太郎くん。いや、それは……」
「ゼロハチだって楽しかったんですよ。な、ゼロハチ」
「ふむ。しかし……」
「ははっ。でもゼロハチ、昼間は星は見えないんだよ」
「ゼロハチ。現在のモードは?」
『ミマワリモード、デス』
「なぜ、静止して上を見ていたのかね?」
『…………異常アリマセン。ミマワリ、ツヅケマス』
PM 2 時 5 分。コース048。ポイント2038カラ2040ヘ。
「ゼロハチ! 今度また、一緒に星を見ような!」
音声一致、“ショウタロウ”。
ランク、“最優先”。
命令ヲ、保存スル。(おわり)
■正太郎くんの愛は、キセキを起こす!(笑)
ゼロハチは本編では『ピコポン』程度だったように思いますが、ロ○ー事件のとき音声を再生してたのでスピーカーはあるのでしょう。
Vコンの音声認識機能の充実ぶりもあわせて考えれば、敷島博士がゼロハチを喋れるよう改良するのは時間の問題かと。
そんなその後のお話です♪2013.9.19 WebUP 2014.10.22 こばなし集へ移動