太陽の使者 鉄人28号 こばなし・その 39 〜 応援 〜
コーンフレークは使わない。
底までぜんぶ、ケーキとフルーツとアイスと……。
うん、評判通り。それにこの、こぼれそうなくらいの苺!
目の前に置かれたパフェは、まさに乙女が夢見る完璧なパフェだった。
抹茶のほうも、栗と小豆と、なんだかわからない色々な緑がとにかくてんこ盛りで、お見事!
「ね? 来てよかったでしょ」
「……すごいね」
甘いもの好きの正太郎くんも、パフェの大きさにさすがにたじたじしてる。
「じゃ、いただきまーす」
中坊だけってどうなのかしらと、ちょっと心配してたけど、お店のなかは若い子が大半。みんな自分のパフェに全集中しててすごい賑やかだった。
ここにあの金田正太郎がパフェを食べに来てる、なんて誰もきっと気づかない。
パパがいたら目立つし注目されちゃったかも。やっぱり連れて来なくて正解だったわ。
緊張もとけて、目の前の豪華絢爛な器にあらためて向きあう。
味も、噂以上!
目の前の正太郎くんは、長いスプーンをやっとはじめて口に運んだ。
「どう?」
「……うん」
一口もぐもぐやってから、やわらかな笑顔が浮かんで、私は内心とびあがりたくなる。
「はかせも来れたらよかったのにね」
「仕方ないわ。ドタキャンももう慣れちゃった。さあ、ぜんぶ食べるわよ」
その緑はムース?とかその果物はなに?とか、たわいもない会話をしてたら、すっかりいつもの調子がもどってきた。
「パフェって、ひとをしあわせにしてくれるわよね」
忘れちゃうでしょ? 嫌なことなんか。
「マッキー。なんか、あった?」
手を止めて、正太郎くんがきいてくる。
口にしなかった言葉を感じ取られたわけじゃなく、わたしに何かあったんじゃないかって心配してる?
こっちが驚いちゃうわ。
「別に、なにも」
心配してるのはこっちよ!
苺をゆっくりすくいながら自分をなだめる。
あの日から、ずっと元気ないから、パパにせがんで一芝居うってもらった。そう、これは正太郎くん元気だしてね!会なんだから。
ぜったい本人には言ってやらないけど。
息をついたらまた心配そうにこっちを見るから、とびきりの笑顔をあげる。
「美味しいもの食べてたら、しあわせになれるって話。パフェはその最上級! とにかく今日はパフェの気分だったから、ぜったい来たかったの。つきあってくれてありがとう」
正太郎くんはまださぐるような目をしながら、追求はあきらめたらしい。
「こちらこそ。さそってくれて、ありがとう」
やれやれって感じに笑って、目の前のパフェにまた戻る。
やれやれ、だわ。
でも正太郎くんには、ひとの心配でもさせといたほうが気が紛れるかもしれないわね。
それとも、さっしのいいこいつのことだから、みーんなバレてて、つきあってくれてるのかもしれないけど。
もう溜め息はつかないよう注意しながら、絶品のゼリーを味わう。
そんなに頑張らなくてもいいのにって思うのよ。
落ち込んでると、ほんともうやめちゃえば?って言いたくなる。
でも絶対やめないってわかってるから、せめてもの、こっそり応援会。
わかってるわよ、自己満足だって。
でも。
この時間が、変えられない記憶を少しでも早く遠くに追いやってくれたら……。
そう願うくらい、いいじゃない。
きらきら輝いてる苺たちの美しいパフェに願いを込めて、私はまた、ゆっくりスプーンをさしいれた。
(おわり)
■あとがき■
また祈ってるマッキーでした(~_~)
パフェは本当に人生の癒し♪
いろいろありますが、ゆっくりゆっくり参りましょう〜
2025.2.14 WebUP
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☆ さいがあがり様より、お宝イラストをいただきました♪ありがとうございます〜〜〜♪