太陽の使者 鉄人28号 こばなし・その 21   〜 あ さ 〜

「おはよう!」
 心のなかで浮かべた言葉がそのまま重なるように明るくかけられ、驚いて見れば、母屋に向かって駆けてゆく後ろ姿は、もう声も届かないほど遠い。
 足元に立つ私には、まったく気づかなかったらしい。
 それにしても、朝からなんと元気なことだろう。
 感心しながら、徹夜明けで固まった身体をゆっくりと伸ばす。
 夕べつい遅くまでつきあわせてしまったためか、すこし寝坊したのではないかという時間に思うが、ここまでわざわざ遠回りをして、朝の挨拶に立ち寄ってくれたのだ。
 その微笑ましい行為を結果こっそり見てしまった。
 あたたかな愉快さが、たまった疲れも睡魔も吹き飛ばしてくれた。
 こうして裏庭に放りだされ立っている鉄人も、なんだか嬉しそうにみえる。
 整備室の改築作業も山場は越えた。
 正太郎くんが学校からもどったら、鉄人を移動してもらって、最終確認をすれば……。
 今夜はひさしぶりに、ゆっくり眠れそうだ。
 息をついて、また暗い整備室にもどることにする。
「あと少しだよ。待っていなさい」
 もう一度ふりあおぎ、声をかける。
 朝つゆに濡れたマスクが、太陽に照らされ輝いている。
 美しいその顔は、ほんとうに微笑っているようだった。

 

     (おわり)

 


■裏庭の鉄人に朝のあいさつ。
似たもの親子のミニミニこばなしでした♪

      2016.12.4 WebUP / 2017.2.14 こばなし集へ移動

 

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