──第四位相守護者　笛の音は不吉な調べ──

　ルルフォムリアは樹木の都。街の至る所に緑の色彩が あり、見る者の心に安らぎを与える──筈だった。
　だが、今は違う。
　都全体を覆うのは歪に色褪せた植物達。空気は淀み、 太陽は翳み、広がる街並みには人が住んでいる気配など 微塵も無い。
　傍らにリトゥエの姿は無い。都に入る前から不調を訴 えていたリトゥエをこのような場所へつれてくるわけに も行かず、今は街の外で自分の帰りを待っている筈だ。
　既に半時間程街中を探索してみたが、人の影どころか、 鳥や犬猫などの動物達の気配すらしない。まるで、もう 何年もの間放棄された死の都へと足を踏み入れたような 気分だった。
　しかし、この都は廃都ではない。ほんの数日前までた くさんの人々が暮らしていた都である筈なのだ。
（……一体、どうなっている？）
　自問するが、答えは出ない。
「おや、まだ現世のニンゲンが残っていたのか」
　その時、唐突に声が響いた。
「まったく、君達ってなっかなか消えてくれないよね。 意地汚いというか、執着しすぎというか」
　貴方はその方向へ慌てて振り向くと、そこには奇妙な 格好をした影が一つ、ぽつんと立っている。その姿を言 い表すに一番適した言葉は……道化師、だろうか。
（街の住人ではない、のか？）
　その影が生み出す気配は、明らかに尋常のものではな かった。どこかで感じた、歪な気配。前にグラジオラス で感じた、あの気配だ。
　警戒する貴方に、道化師は軽く笑い、白の仮面を外す。 その下に現れたのは子供のような顔と笑みだ。
「名乗る程でもないけど、まぁ、一応名乗ろうか。ボク の名はペールメール。ボクらの世界へやってきた人々を 案内し、楽しませる為に生まれた、生粋の案内役にして 道化師さ。もっとも、今は休業中だけどね」
　ケタケタと甲高い声で笑う。
「ま、それは良いとして。君もこの街の連中みたく、さ っさと消えてよ。ボクの今の役目は、彼女がこの世界へ 現出するための手助けだからね。君等みたいな下等なニ ンゲンが居たら、彼女も幻滅するだろうし」
　道化師は一通り笑い終えると、懐から一本の笛を取り 出し、構え、吹く。
　同時に、ぎぃ、とも、ぢぃ、ともつかぬ、到底笛の音 とは思えぬ異音が響き、次の瞬間、身体全体が捻じ切ら れるような強烈な力が掛かる。
「が、っ」
　肺から空気と共に鈍い呻きが漏れた。響く音が高鳴る ごとにかかる力が更に強まり、四肢が今にも千切れ── る一歩手前で、その力から解放された。
　道化師の顔が驚きの表情で固まる。
「……消えない？」
　気づけば、貴方の全身には粘質の光が纏わりついてい た。
　軽く腕を振ると、生温い感触と共に光も釣られて動き、 小さな飛沫を立てる。その光の膜は身体に刻まれた刻印 から絶え間なく生まれ、身体を覆っていた。
　そんな貴方の様子を見て、道化師は納得した表情を浮 べ、笑う。
「ああ、なるほどね。君が『オルドリュード』を倒した ニンゲンだったのか。気づかないとは、ボクもどうかし ていたな。……ならば、力づくでこの世界から消えても らうだけだ。おいで、ミリオン」
　道化師は笛を数度吹く。耳障りな音と共に現れたのは、 リトゥエ程度の大きさの小さな妖精が二体。彼女らはそ の姿形に似合わぬ淫靡な笑みを浮べ、道化師の両肩に止 まる。
「では、やろうか。彼女の声を聞かぬ者に、刻印を所持 する資格は無いんだ。それを身を持って教えてあげるよ」

第四位相守護者 vs 四葉のクローバー

ミリオントーンA HP 431/431 　 歪の奏者ペールメール HP 727/727 　 ミリオントーンB HP 431/431 　 　 うりもき HP 630/632 　 渡部シンイチ HP 934/936 　 せつら HP 638/638

ミリオントーンA HP 358/431 　 歪の奏者ペールメール HP 554/727 　 ミリオントーンB HP 259/431 　 　 うりもき HP 495/632 　 渡部シンイチ HP 813/936 　 せつら HP 599/638

ミリオントーンA HP 204/431 　 歪の奏者ペールメール HP 532/727 　 ミリオントーンB HP 0/431 　 　 うりもき HP 437/632 　 渡部シンイチ HP 774/936 　 せつら HP 559/638

ミリオントーンA HP 56/431 　 歪の奏者ペールメール HP 509/727 　 ミリオントーンB HP 0/431 　 　 うりもき HP 486/632 　 渡部シンイチ HP 936/936 　 せつら HP 638/638

ミリオントーンA HP 0/431 　 歪の奏者ペールメール HP 509/727 　 ミリオントーンB HP 0/431 　 　 うりもき HP 369/632 　 渡部シンイチ HP 799/936 　 せつら HP 492/638

ミリオントーンA HP 0/431 　 歪の奏者ペールメール HP 310/727 　 ミリオントーンB HP 0/431 　 　 うりもき HP 369/632 　 渡部シンイチ HP 529/936 　 せつら HP 492/638

　
「はは、ボクの負けか。所詮はただの案内役だった、っ て事かなぁ」
　貴方の攻撃を受けた道化師の身体が、ゆっくりと、ま るで周囲の空間に溶け込むように消えてく。身体の先端 から解け、塵となって漂い、失せる。
「……でも、そうだね。これで良かったのかも知れない。 このまま彼女を現世界に呼び込んだところで、彼女の悲 しみは途切れない。ならば、ここでボクが消えたとして も──」
　地に伏した道化師は、満足げな表情を浮べ呟き……だ が、その表情は唐突に一変する。
「いや、だめだ。消えるわけにはいかないんだ。たとえ その結果が報われるものでなくとも、ボクはボクの役目 をこなさなければ。──受け取れ、ニンゲンよ！」
　憤怒に近い表情を浮べ叫ぶ道化師。彼が右掌をこちら へ向けると、その手を中心に強烈な光が瞬いた。
　同時に、ぢり、と。
　左足の甲に、焼けた何かが押し付けられたような感覚 が走る。
「あとは……君が他の守護者に狩られるのを期待するだ けだけど……どうだろうね……だめ、かなぁ……」
　その言葉と共に、道化師は完全にこの世界から消滅し た。
　異質な空気に満ちていた都が整調化されて元の状態へ と戻っていく。まるで世界全てが巻き戻っていくかのよ うに街を覆う緑に活力が溢れ、都に住んでいた人々が空 間から染み出すように次々と現れる。
（……しかし）
　全ては元の形に戻った筈なのに、その風景は今までの ものとはどこか違うように思えた。
　
　──ぢり、と。
　身体に刻まれた刻印が疼く。
　
　貴方を包む世界はゆっくりと、しかし確実に、異質な モノへと変貌していた。

　位相刻印がもたらす仮初めの力、カースオブペールメー ルを手に入れた！

　120ポイントの経験値を得た！

──End of Scene──

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