SFO

SFOとはサンフランシスコ国際空港の略称のことである。これは筆者が1999年11月下旬に、アメリカ出張から帰国の際に体験した事実に基づいた記録である。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

朝のサンフランシスコ国際空港。早めにホテルを出て空港カウンターでチェックイン。無事、チェックインして搭乗時間前までは自由時間である。DutyFreeショップで買い物したり朝食をとったり後にゲートへ。ゲート前で免税品を受け取ったり、ソファーで30分ほどまったりしていると搭乗予定時間の10時40分になった。
まずはファーストクラス、ビジネスクラスの客が搭乗する。その後エコノミークラスが搭乗する。今回のフライトは定員の半分程度の搭乗者数らしいが、エコノミーの後部座席は込み合っている。前部の方がすいているので後で移動しよう。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ドアクローズがかかってまもなく飛行機がゆっくりと動き出す。ノロノロと空港をさまよっている感じがする。なんか様子がおかしいぞ。と、しばらくして「エンジントラブルのためアプローチに戻って再点検します。詳細は追って連絡します」というスチュワーデスのアナウンスが入った。しばらくして機長のアナウンスがあって油圧計が異常を示したので離陸を中止したとのこと。おそらく計器の故障だろうから、搭乗アプローチに戻って点検と給油を行うそうだ。まあ、これくらいはよくあることらしい。

アプローチ直前で停止。しかもこれが長い。機長によれば搭乗口の空き待ちらしい。
アプローチに戻って30分くらい経ったであろうか。まだ時間がかかるから降りたい人はトランジットカードを受け取って一度降りて良い、ということになった。もう空港内施設は飽きた私はそのまま機内に残ることにした。ここで席を空いていた窓際に移動した。

この席移動に際して、最初は中央席(4つ席が並んでいる)におじさん一人しか座っていないところの端の席に移動しようとして「ここに移動してきていいですか?」と一応そのおじさんに断ると「俺、横になりたいから」と予想外の返事。まわりにいた同行者も「おいおい、このおっさん、1人で4人分の席取る気かい」と呆れている。こんな常識ないおじさんともめるのもイヤなので、では〜とキョロキョロしていると今回のツアコンの人が空いている窓際席を発見してくれたのだ。

さっそくその席に移動して新聞や雑誌などを読む。スチュワーデスがオレンジジュースなどを配っている。そろそろみんなイライラしてくるころという配慮であろうか。
結局再搭乗が行われたのは13時過ぎ。スッチーがハンドカウンタで乗客を数えている。ドアクローズがかかってもなかなか飛行機が動き出さない。割り込みスケジュールだからなかなか滑走路に入れないのだろうか?。

やっと動き出して再び滑走路へ向かう飛行機。なんともゆっくりに感じられる。今度は大丈夫なんだろうな。
そして滑走路に到着したことが窓から見て分かる。一度静止してから、さぁテイク・オフと思ったらそのままエンジン音が落ちて滑走路の脇道へ。後続の飛行機がどんどん離陸していく。そしてまた動き出して「離陸を試みます」というスッチーの放送が。「試す」のはやめてくれ〜と心の中で叫んだが飛行機は動き出した。しかしさっきと同じように離陸はしないでまたも脇へ。程なく、「当機は離陸を中止いたしました。詳細は追って連絡します。」とスッチーのアナウンス。あら、いったいどうしたんでしょ。「いいかげんにしろよ〜」という声もチラホラ聞こえる。しかし万全でない状態で飛んで事故を起こされる方がもっと怖い。しばらくして「先ほどの油圧計の異常が発生しました」と機長。アプローチに戻ったあと、後の行動を指示するそうだ。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

アプローチの空きを待ってからさきほどと同じような場所に飛行機はとまった。しばらくして「復旧の目処が立ちませんので当フライトは欠航となります。宿泊のホテル、明日の振替便などについては地上係員から指示します」というアナウンス。

さっそく動き出したのは添乗員のSさん。「ANAのカウンター前に集合してください」と言い残してずんずん進んで行ってしまった。スッチーが申し訳なさそうな顔で我々を見送ってくれる。これで明日は会社に行かないで済むぞ、と内心みんなほくそえんでいたので我々の仲間は割と穏やかな顔をしていたに違いない。
トランジットカードを受け取って空港内を逆戻り。手荷物検査の横を通りぬけてANAカウンターへ。既に行列が出来ていたがSさんは先頭で既になにやら交渉している様子である。
「皆さん、明日の飛行機で帰国でいいですか?、それとも今日中に帰りますか?」
の問いに対しては
「明日でいいです」と17人全員一致。トランジットカードを渡して手続きをお願いした。
我々はカウンター前の広場で一服。手続きに30分ほどかかったであろうか。Sさんが書類を持って戻ってきた。ホテルは空港隣接のWestin。国際電話1回分と夕食朝食は$50までANAが持つそうである。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

空港脇からホテルまでバスが出るそうなので荷物を受け取った後に移動する。ANAの職員の誘導で5分ほど歩いて所定の場所へ。しかしなかなかバスが来ない。20分ほど待ってやっと大型バスがやってきた。まずは荷物を積み込んで、とやっていたら、バスの脇のトランク前に並んでいた茶髪の若者が列の前の人を差し置いて荷物を積み始めバスに乗車してしまった。これを見て後に続くバカ者が多数。ちゃんと列に並んでいて荷物を積もうとする人、後ろなのに荷物を積み込もうとする人、入り乱れて収集がつかなくなってしまった。「おい、なんで後ろの奴が先に荷物積むんだ。並んでいるだろ!」と年配のおじさんが一喝。これが効いたのか、その場は収まった。それでも「ちゃんと人間と一緒に荷物を積んでくれないと困る!」とかANAの係員に詰め寄る人もいてまだ騒然としている。我々はSさんの素早い行動のおかげで大半のメンバーが最初のバスに乗車することが出来たのである。やはり持つべきものはベテラン添乗員か。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、バスの運転手はアジア系のおじさん。空港を出てハイウエイの入り口まで来てWhere should I go?などと言っている。横にいたANAの女性がWestin Hotelと告げるがWestin?DownTown?などと言っている。たしかにサンフランシスコのダウンタウンにもWestinはあるらしが目的地はそこではない。Driver doesn't know where Westin Hotel is!などとANAのお姉ちゃんがトランシーバーで話している。何とか方向は分かったようで誘導にしたがってハイウエイに。5分ほど走ってハイウエイを降りる。が、ドライバーもお姉ちゃんもWestinの詳細の場所は知らないようだ。客はみんな呆れて笑うしかない。
しかしラッキーなことに降りたらすぐにWestinの看板が見えた。ああ、良かったと思ったが、このホテルの車寄せは到底大型バスが入れるような大きさではない。どうするのかなあ、と思ったらこのドライバーはいきなり道路をふさいで無理矢理バックでバスを車寄せに突っ込んだ。確かにこれしか方法はなかったようで、なかなかやるじゃん、この運転手と拍手を浴びていた。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、ホテルのチェックインもSさんが一括してやってくれる。またしても列の先頭でやってくれている。すばらしい。それでも20分くらいはかかった。メンバーみんなで協力して宿泊の誓約書などを配ってサインなどしてトップクラスで部屋に入ることが可能となった。それでもこの時点で既に5時である。
ツアー中はずっと相部屋だったが、この日はSさんの交渉のおかげで全員シングルになった。

さて、しかし腹が減った。レストランはホテルに一個所。50人ほどの収容能力のようだ。ANA欠航の客が一斉にくることを考えると1番でレストランに入ったほうが良さそうだ。ということで同じ部の先輩と荷物をおいて5時半(レストランの開店時間)にレストラン前集合とした。

部屋に行くとなんとツインの部屋。ダブルベッドが2つ置いてあり、浴室も部屋も広く、おそらくこのツアー中最高の部屋である。素晴らしい。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

会社には旅行代理店の方から連絡を入れてもらうことになっていたのでとりあえず自宅に国際電話してみる。日本は昼前のはずだ。ガイドブックの「国際電話のかけ方」を見ながら電話すると自宅は留守電。一応メッセージをいれておく。
部屋の電話にはデータ端子がついていたので、トランクからモバイルを取り出して接続しメールをチェックしようとする。が、どうやら人が電話に出ている様子。すかさず切る。で、ホテル照会のパンフレットを見るとどうやらここの局番はサンフランシスコ市内のものとは違うようだ。そこでアクセスポイント一覧から同じ局番の番号を探して設定変更。無事つながった。妹が会社にいるはずだから、ということで妹にも帰国延期のメールを出しておく。会社の同僚にも同様のメールを出す。すかさず妹から返信があって「いいな〜、Westinきれい?」と呑気なことを言っている。そうこうしているうちに5時半になったので1階のレストランへ。

既にレストランがオープンしていて半分くらいは日本人で埋っている。How many?に対してTwoと応えテーブルに通される。メニューは少なくて、前菜と主菜をそれぞれ3種類の中からチョイスするメニューを渡された。$50分めいっぱい使わないと、と貧乏人根性丸出しでメニューを検討。一番高いNewYorkステーキを選択。私は前菜にシーザーサラダをチョイス。ウエイターは典型的な陽気なアメリカ人でGood evening.How is it Tonight?Ready to order?とニコニコしながら聞いてきた。ステーキの焼き方は?と聞くのでレアと応えるとOh!Rear?と目を見開いてリアクション。ん、何で?で、先輩はミディアムと応えるとOK!That's goodなどと言っている。うむむ、一体なんだ。すごい生肉の固まりでも出てきてしまうんであろうか?ドリンクはビールを注文した。種類はいつものバドである。サラダとパンが出てきてこれもそれなりの量。そしてドキドキのステーキ。なんのことはない、普通のステーキである。レアとはいいながらレアよりは火が通っている感じだ。ということは・・・やはりミディアムはほぼ赤いところがないくらいに焼けてしまっていた。お腹空いていたので何でも旨かったのだろうが、なかなか旨かった。このツアーで一番良い食事であったように思う。

食事代は部屋に付けるようにとANAから指示があったので、チェックはセパレートでお願いしてルームキー(カード式)を提示してサインする。税金にサービス料が15%もついてたのでチップは置かずにテーブルを後にする。なんと総額$42これでは明日の朝食は食えないな。でもSさんが7時半には出発しようって言ってたので飯は空港で食ってギリギリまで寝ていよう。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ホテルフロント前は今だに行列。最後の人の手続きが終わるのは何時になるのであろう。やはり持つべきものは優秀な添乗員である。素晴らしい。
部屋ではすることもないので、モバイルでWeb見まくったりメール書いたり。ちょっとだけ○○○なビデオも見たり。
何時の間にかドアの下からANAからのお詫び文書が。そして風呂に入っている間にSさんから明日の集合時間などの伝言が電話に入っていた。やることもなくなった夜11時に就寝した。

翌日は6時半に起床し荷作りをして身支度をして7時過ぎにフロント前に。チェックアウトの列はまだ出来てなくて5分で手続きして集合場所の玄関前へ。みんなそろったところでホテルの送迎バスで空港へ向かった。

空港のANAカウンターはまだ開いていなかったが、Sさんがサクサクと手続きしてくれて8時半から暇に。飛行機は昨日同じ便に全員が乗るらしい。きっと満席だ。DutyFreeショップも見飽きたし、ファーストフードコートで先輩とまったりして10時に搭乗口へ。搭乗口前のソファーでまったりして時間通りに搭乗。やはり今回は満席。1つも席は空いていないようだ。
「昨日は整備不良のため、ご迷惑をおかけして・・・機体は昨日とは違うものを用意しました」とアナウンスがある。それよりもこの混雑を何とかしてくれ

今日のフライトは気持ち悪いほどスムーズ。滑走路にも3分程でたどり着き、そのままほとんど機体は停止することもなく離陸して行った。昨日のドタバタは何だったのだろう?

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

今日の騒動ではツアコンのSさんの機転の良さが素晴らしかった。何事も機先を制して行動し、我々に不快感を与えないというのは同じサービス業に従事するものとして非常に感銘を受けた。顧客満足度を高めるという意味では最高の仕事をしてくれたと思う。是非見習っていきたいものである。

戻る