25.ラストイン〜卒業〜 あっという間の4年間

[我が青春のマクドナルド Index]


 92年3月15日は少し寒い日であった。いつもと変わらず、車でお店に向かう。今日のシフトは普通の平日のクローズだ。ただ、今日のクローズは単にお店を閉めるだけではない。自分のマック生活のオールクローズでもあった。そう、今日はラストインに日だ。

 毎年この季節になるとマクドナルドでは学校の卒業によりバイトを辞めるクルーが相次ぐ。高校を卒業して地方の大学に行く者、大学を卒業し就職する者がほとんどだ。このようなクルーが最後にお店で働く日のことを「ラストイン」と呼び、クルーやマネージャーの有志でささやかなセレモニーを行ったりする。

 ラストインの終えたクルー達はもうお店と関わり合いが無くなるわけではない。その後「卒パム」と呼ばれる卒業記念パーティーがお店単位に行われるのが普通だ。その「卒パム」にはお店の色がかなり出るようだ。体育会などで、卒業していく上級生が下級生に自分たちの為し得なかった夢を託す言葉で涙したり、その言葉を受けてまた涙する下級生、という姿はよくあるだろう。これと同じように毎年涙また涙のパーティーになるお店もあれば、終始笑顔で進むパーティーのお店もある。私の店は後者の方であったので、ラストイン・卒業だからといって特に感慨にふけることもないのではないかと思っていた。実際、ラストインでお店に向かうときも特に普段と違う気分には、全くと言っていいほどならなかった。

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 私の他に卒業を控えるSWMGRも2名ほど。あと高校生クルーも数人いた。彼らは前の週末の日曜日に既にラストインを済ませていて、私が卒業生では最後のラストイン対象者だった。ラストインはDシフトあるいはオープンシフトを選択するクルーが多い。ラストを見送る人も多いし、シフトが終わってから連れ立って食事や飲みに行くことも出来るからだ。しかし私はクローズを選択した。これはもうずっと前からそう決めていた。大人数の人に拍手で送られるのも良いかも知れないが、そのような場は前述の卒パムの場がある。ならば自分なりにこだわり続けたクローズで最後を飾りたかった。

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 いつものとおり、クルールームに入り挨拶をして、マネージャールームで連絡事項に目を通し、ハットをかぶってお店に向かう。平日の夕方である。ピークなど無く、平和な時間がお店を支配している。そのままフロアコントロールを引き継ぎ、シフトをこなしていく。一緒にインしているクルーやSWには気心にしれた奴が多かった。私のラストインのクローズに合わせてインしてくれたことは分かっていたので非常にありがたかった。

 お店のクローズシフトは18時ー翌3時である。休憩は通常22時から1時間。ナイトシフト(夜通し)マネージャーがインしてくるのと交代で休憩に入る。特に大きなアクシデントもなく22時を迎え、休憩に入る。休憩に入る直前にクローズのポジションを決める。今日は私のラストインということもあり、ポジションの第一選択権を私にくれていた。私は迷わずシンク(什器の洗浄作業)を選んだ。

 クローズではシンクは最もきついポジションではあるが、作業が単純なポジションでもある。通常、クローズのトレーニングはシンクから始まる。当然、私もシンクからクローズは習った。クローズはシンクに始まりシンクに終わる。なんとなくこだわってみたかったのだ。

 ポジションも決まって休憩に出る。普通に食事を済ませ、1時間たったら厨房に戻る。既にプレクロと呼ばれるクローズの前作業が進んでいる。

つづく



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